「売上は悪くないはずなのに、月末になるとなぜか苦しい」
この感覚に心当たりがあるなら、あなたのサロンに足りないのは売上ではなく、キャッシュフローの設計かもしれません。
美容室の経営では、利益が出ていても手元にお金が残らないという現象が起こります。
帳簿上は黒字なのに、通帳の残高は右肩下がり。家賃、材料費、スタッフの給与、借入の返済——毎月の支払いに追われて、「次の一手」を打つ余裕がない。
実はこれ、美容室の経営構造に根ざした問題です。そしてこの問題は、キャッシュフローの基本を理解し、「いくら残すか」を設計するだけで大きく改善できます。
この記事では、キャッシュフローの基礎知識から、美容室特有のお金が消える構造、そして具体的な改善アクションまでを順を追って解説します。
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監修者

西脇 敬久
MBA、公認会計士、税理士の資格を有し、美容業界に特化した公認会計士・税理士として多数の美容室を支援。
決算書や試算表を専門家だけのものにせず、経営者が経営判断に使える形へと整理することを強みとしている。
美容室経営において本当に見るべき数字を明確にし、「誰でもわかる会計の見える化」を通じて、利益構造やコストバランスをシンプルに把握できる財務設計を行う。美容室向けの会計セミナー講師としても活動中。
美容業界に特化した会計・労務の専門チーム。
500サロン以上の支援経験をもとに、数字・人・将来の判断を“感覚”ではなく“軸”でできる経営を支えています。税金や節税だけで終わらせず、
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そもそもキャッシュフローとは?美容室オーナーが知っておくべき基本
キャッシュフロー=「実際の現金の流れ」。利益とは何が違うのか
キャッシュフローとは、事業活動における現金の動きのことです。
入ってくるお金(入金)と出ていくお金(出金)の差額が、手元に残るキャッシュになります。
ここで多くのオーナーが混乱するのが、利益とキャッシュフローの違いです。
利益は、売上から経費を差し引いた「帳簿上の計算結果」です。
一方、キャッシュフローは「実際にいま通帳にいくらあるか」という現実の現金の話。この2つは、同じ数字にはなりません。
たとえば、月の売上が200万円で経費が170万円なら、帳簿上の利益は30万円です。
ところが、同じ月にカード決済の入金が翌月にずれ込んだり、借入の返済が20万円あったり、消費税の納付が重なったりすると、実際の通帳残高は30万円も増えていない。むしろ減っている——こうしたことは美容室では珍しくありません。
利益が出ていることと、手元にお金があることは別の話です。
キャッシュフローを理解する第一歩は、この「ズレ」を認識することから始まります。
美容室のお金の流れを図で理解する——売上・経費・返済・税金の関係
美容室のキャッシュフローは、大きく分けて3つの流れで構成されています。
1. 営業キャッシュフロー(日々の営業から生まれるお金) 売上から人件費、材料費、家賃、光熱費、広告費などの営業経費を差し引いたもの。いわば「本業でどれだけキャッシュを生み出しているか」を表します。
2. 投資キャッシュフロー(設備投資に使うお金) シャンプー台の入れ替え、内装のリニューアル、新しい美容機器の導入など。将来の売上を生むための支出ですが、一時的にキャッシュを大きく減らします。
3. 財務キャッシュフロー(借入と返済のお金) 開業時の融資や運転資金の借入、その返済。そしてここに、多くのオーナーが見落としがちな消費税や法人税の支払いも重なってきます。
美容室のオーナーが意識すべきは、この3つの流れの「合計」が毎月プラスになっているかどうかです。営業で100万円のキャッシュを生み出しても、返済が80万円、設備投資が30万円あれば、手元のキャッシュは10万円減っています。
黒字なのにお金がない——「黒字倒産」は美容室でも起きている
「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
帳簿上は利益が出ているのに、手元の現金が尽きて事業が続けられなくなる状態です。
美容室の倒産は3年連続で増加しており、2025年1〜8月で157件と過去最多を記録しています(帝国データバンク調べ)。
もちろん、すべてが黒字倒産ではありません。
しかし、「売上はあるのにお金が回らなくなった」というケースは少なくない。利益を出すことと、キャッシュを残すことは、そもそも別の課題なのです。
だからこそ、売上を追いかけるだけでなく、キャッシュフローを管理する視点を持つことが経営者には求められます。
美容室の資金繰りが苦しくなる「よくある原因」
固定費(家賃・人件費)の比率が高すぎる
美容室の経費のなかでもっとも大きな割合を占めるのが、家賃と人件費です。
この2つは売上が下がっても減らない固定費であり、毎月確実にキャッシュを圧迫します。
特に人件費は、美容室の経費の中でもっとも比率が高くなりやすい項目です。
スタッフを雇っているサロンでは、売上の40〜50%が人件費に消えることも珍しくありません。給与だけでなく社会保険料の負担も含めると、実質的なコストはさらに膨らみます。
家賃も同様です。立地のいい場所に出店すれば集客に有利ですが、その分だけ毎月の固定費は重くなる。
売上が好調なときは気にならなくても、閑散期や予期せぬトラブルが起きたときに、固定費の重さが一気にのしかかってきます。
キャッシュレス決済の入金タイムラグで手元資金がズレる
美容室にとってキャッシュレス化は避けられない流れですが、ここにキャッシュフローのリスクが潜んでいます。
現金払いであれば、施術した日にそのまま売上が手元に入ります。
しかしクレジットカードやQRコード決済の場合、入金は数日後から数週間後。決済代行会社によっては月2回の入金サイクルというケースもあります。
売上は発生しているのに、手元に現金が届くまでにタイムラグがある。
その間にも家賃や材料費の支払い期日はやってくる。この「入金と出金のタイミングのズレ」が、資金繰りを圧迫する原因になります。
5月の支払いを5月の売上で回していたサロンは、キャッシュレス比率が上がるほど、手元資金のショートリスクが高まるのです。
季節変動と閑散期——売上の波にキャッシュが追いつかない
美容室の売上には季節的な波があります。年末年始、卒業・入学シーズン、ボーナス時期は忙しくなる一方で、梅雨時期や1〜2月は客足が落ちる傾向にあります。
この売上の変動に対して、固定費は変わりません。
家賃、人件費、リース料——閑散期でも同じ金額が出ていきます。
繁忙期に入ったお金を閑散期の支払いに充てる、という意識がないと、忙しい月はお金があるように感じて少し使いすぎ、暇な月にキャッシュが足りなくなる。
こうした波の管理ができていないことが、「なんとなくいつも苦しい」の原因になっています。
消費税・社会保険料など「後から来る支払い」の準備不足
毎月の売上と経費は目に見えやすいですが、消費税や社会保険料のように「後からまとめて請求される支払い」は見落とされがちです。
とくに消費税は要注意です。
インボイス制度の導入もあり、課税事業者になったサロンでは、年間の消費税納付額が想定以上に膨らむケースが増えています。
消費税の納付は年1〜2回ですが、その金額は数十万円から百万円を超えることもある。
日々の売上の中に「消費税分」が含まれていることを意識しておかないと、納付時にキャッシュが一気に減ります。
法人税や住民税の支払いも同様です。決算後に「こんなに税金かかるの?」と驚くオーナーは少なくありません。
これらの「後払い」の存在を日頃から意識し、毎月少しずつプールしておくことが資金繰りの安定につながります。
一般的なキャッシュフロー改善策とその限界
経費削減(材料費・光熱費・通信費の見直し)
キャッシュフロー改善と聞いて最初に思い浮かぶのが、経費の削減でしょう。
LED照明への切り替え、節水シャワーヘッドの導入、通信費やサブスクリプションの見直し、電力会社の乗り換え——こうした施策は、すぐに取り組めて効果も実感しやすいものです。材料費も、発注先の見直しやまとめ買いの工夫で数%のコストダウンが期待できます。
ただし、こうした「削る」施策には限界があります。
光熱費を月1万円下げたとしても、年間で12万円。
もちろん無駄を省くことは大切ですが、経費削減だけでキャッシュフローの根本問題が解決するわけではありません。
むしろ注意すべきは、削ってはいけないものまで削ってしまうことです。
材料の品質を落とせば施術のクオリティに響き、広告費を削りすぎれば新規集客が止まる。スタッフの福利厚生を削れば、離職につながりかねません。
経費削減は「入口」としては正しいですが、それだけで資金繰りが根本的に楽になるケースは多くありません。
資金繰り表の作成と月次管理
もうひとつよく言われるのが、「資金繰り表を作りましょう」というアドバイスです。
毎月の入金予定と出金予定を一覧にして、キャッシュの残高推移を可視化する。
これは確かに有効な手段で、資金ショートを未然に防ぐ効果があります。
しかし現実問題として、美容室オーナーの多くは日々の営業に追われていて、毎月コツコツ資金繰り表を更新する余裕がない。そしてもうひとつの問題は、「表をつくったところで、何をどう改善すればいいのかがわからない」ということです。
数字を並べること自体は目的ではありません。
大事なのは、その数字から何を読み取り、どこを変えるかの判断基準を持つことです。この「判断基準」がないまま資金繰り表をつくっても、毎月の不安が数字で見える化されるだけで終わってしまいます。
融資・補助金・助成金の活用
資金が足りなければ借りる、使える制度があれば活用する。これも正しい選択肢です。
日本政策金融公庫の融資は、美容室の開業時だけでなく運転資金の確保にも使えます。
自治体の補助金や助成金を組み合わせれば、実質的な負担を減らすことも可能です。
ただし、融資にも限界があります。借りたお金は返さなければなりません。
「借りられるだけ借りる」という姿勢では、毎月の返済がキャッシュフローをさらに圧迫することになる。
ここで多くの記事が触れていないのは、「借りた後にどう返すか」の視点です。
キャッシュフローの改善なしに融資を受けても、問題の先送りにしかなりません。融資を活かすためには、返済を前提とした経営設計が必要なのです。
それでもお金が残らないのはなぜか——美容室特有の「キャッシュが消える構造」
ここまで挙げてきた一般的な対策は、どれも間違いではありません。ただ、これらをすべて実行しても「なんか苦しい」が解消されないサロンが多いのも事実です。
その理由は、美容室には一般的な経営改善では拾いきれない「キャッシュが消える構造」が存在するからです。
返済はコストではない——税引後利益から出ていくお金の正体
これは多くのオーナーが知らない事実ですが、借入の返済は経費ではありません。
帳簿上、借入の元本返済は「費用」として計上されないのです。
つまり、利益が出て、税金を支払った「後の残り」から返済していくことになります。
たとえば月の利益が30万円、法人税等が約10万円かかるとすると、手元に残るのは約20万円。
ここから毎月の返済が15万円あれば、実質的に手元に残るキャッシュはたった5万円。
帳簿上は「月30万円の黒字」なのに、通帳には5万円しか増えない。
「黒字なのにお金がない」の正体は、この構造にあります。
返済額を加味したうえで「本当に残るキャッシュ」を把握していないと、利益が出ているのに資金繰りが苦しいという矛盾に悩まされ続けることになります。
消費税の落とし穴——美容室は仕入控除が少なく、消費税負担が重い
消費税の仕組みをざっくり説明すると、「売上にかかる消費税」から「仕入れにかかった消費税」を差し引いた額を納付する、というものです。
製造業や小売業であれば仕入れが多いため、この差し引き(仕入税額控除)でかなり消費税額が圧縮されます。
しかし美容室は人件費の比率が高い業種です。人件費には消費税がかからないため、仕入控除に使える金額が少なくなります。
結果として、美容室は売上規模に対して消費税の負担が重くなりやすい構造を持っています。
国内外500以上のサロン経営に携わってきた経験からも、消費税の支払いに驚くオーナーは非常に多いと感じます。
ひとつの目安として、売上の約5%を消費税の見込み額としてプールしておくことをおすすめします。
月商200万円のサロンなら、毎月10万円を消費税用に別口座で確保しておく。
この習慣があるかないかで、納付時のキャッシュへの打撃がまったく変わってきます。
コスト構成に「正解値」がないまま経営している危険性
「うちの人件費率は高すぎるのか、妥当なのか」——この問いに自信を持って答えられるオーナーは、実はそう多くありません。
一般的に「人件費は売上の○%が適正」と言われることがありますが、この数字はサロンのタイプによってまったく異なります。
美容室の経費は大きく4大コストに分類されます。
人件費、材料費、家賃光熱費、広告費の4つです。
この4つの合計が売上の80%以内に収まっているかどうかが、キャッシュフローを設計するうえでの基本ラインになります。
重要なのは、80%の「中身」の配分はサロンごとに違うということです。
売上200万円のサロンで考えると、スタッフ教育に力を入れる人材特化型のサロンなら人件費52%・材料費7%という配分になりますし、技術特化型なら人件費35%・材料費22%とまったく異なる。
ブランディング特化型なら家賃光熱費に25%を使い、マーケティング特化型なら広告費に19%を投じるという設計もありえます。
唯一の共通ルールは「合計80%以内」。
これを超えていると、残りの20%で税金、返済、投資、そしてオーナーの取り分をすべて賄わなければならなくなる。つまり、余白がゼロになります。
この「余白」こそが、キャッシュフローの安全弁であり、次の一手を打つための原資なのです。
コスト構成を把握しないまま「なんとなく回している」状態が、資金繰りの不安の根っこにあるケースは非常に多い。
キャッシュフローを「設計」する——いくら残すかを数字で決める方法
ここからは、具体的にどう数字を見ればいいのかを解説します。難しい会計の知識は必要ありません。見るべきポイントはシンプルです。
見るべき数字は3つだけ——売上・コスト・利益
キャッシュフローの改善というと、複雑な財務分析が必要だと思われがちですが、まず見るべき数字は売上・コスト・利益の3つだけです。
売上はそのまま。コストは4大コスト(人件費、材料費、家賃光熱費、広告費)とその他の運営コストの合計。そして利益は、売上からコスト合計を引いたもの。
この3つを毎月把握するだけで、「先月よりコストが増えたのか減ったのか」「利益は残っているのか」が見えるようになります。ここが出発点です。
4大コスト80%以内の法則——サロンタイプ別の最適バランスとは
前述のとおり、4大コストの合計が売上の80%以内に収まっていれば、残りの20%が「余白」として経営を守ってくれます。
この20%から税金を払い、借入を返済し、設備投資や緊急時の備えに回す。逆にいえば、80%を超えている状態は、毎月キャッシュが削られ続ける構造になっているということです。
売上200万円のサロンを例にとると、4大コストの合計が160万円以内であれば80%ライン。
残り40万円がキャッシュフローの原資になります。ここから税金(法人税・消費税)と返済を差し引いて、いくら残るか。この計算ができれば、「今月はいくら使えるか」が見えるようになります。
あなたのサロンでは、4大コストの合計が売上の何%になっていますか。まずはここを計算してみてください。
安全キャッシュライン=コストバランスの2ヶ月分
キャッシュフローの改善において、もうひとつ重要なのが「いくらの残高をキープすべきか」の基準値です。
一般的には「固定費の3ヶ月分」が安全ラインと言われますが、美容室の場合はもう少し実践的な基準があります。サロンコストバランス(4大コスト+その他運営コスト)の2ヶ月分を安全キャッシュラインとして確保しておくこと。
月の総コストが160万円のサロンなら、320万円。
これだけの残高が口座にあれば、仮に売上が急落したり、突発的な設備故障が起きたりしても、2ヶ月は事業を維持できる。この「守りの金額」を先に確保しておくことで、経営判断に余裕が生まれます。
キャッシュ余力の公式——「本当に自由に使えるお金」を可視化する
安全キャッシュラインを理解したうえで、さらに一歩踏み込んだ指標があります。それが**「キャッシュ余力」**という考え方です。
計算式はこうです。
キャッシュ余力 = 預金残高 − 消費税見込み − 安全キャッシュライン
たとえば、預金残高が500万円、消費税見込み(売上の5%を毎月積み立てた累計)が50万円、安全キャッシュラインが320万円なら、キャッシュ余力は130万円。
この130万円が、設備投資や新しい取り組み、スタッフ教育など「攻め」に使える本当の余力です。
逆にこの数字がゼロやマイナスなら、いま手元にある預金は見かけ上の金額であって、実質的に余裕はない。
この公式を知っているだけで、「使っていいお金」と「触ってはいけないお金」の区別がつくようになります。
キャッシュフローの不安の多くは、この区別がないことから生まれています。
借入との正しい付き合い方——返せる体質をつくるという発想
銀行が見ているのは「いくら必要か」ではなく「いくら返せるか」
融資を受けるとき、「いくら借りられるか」ばかりを気にするオーナーは多いですが、銀行が本当に見ているのは「いくら返せるか」です。
この判断基準になるのが借入償還年数(かりいれしょうかんねんすう)。
計算式は非常にシンプルです。
借入償還年数 = 借入残高 ÷ 年間キャッシュフロー(返済原資)
たとえば、年間で500万円のキャッシュフローがあるサロンが3,000万円の借入を抱えている場合、3,000万 ÷ 500万 = 6年。
「このサロンは6年で借入を返し切れる体力がある」と銀行は判断します。
借入償還年数の計算——理想は5年以内、目安は10年以内
この借入償還年数は短いほど評価が高くなります。
- 5年以内……非常に優秀。追加融資にもプラスに働く
- 10年以内……一般的な許容ライン
- 10年超……新規借入は厳しくなり、返済計画の見直しを求められる可能性あり
あなたのサロンの借入残高を、年間の返済原資(借入返済前の成績+借入返済額)で割ってみてください。
いま何年で返せる体質になっているか、数字で確認できます。
借入余力は経営改善で高められる
借入償還年数が長すぎる場合でも、悲観する必要はありません。
この数字は経営の工夫によって変えられるからです。
材料の発注や在庫管理の見直し、予約枠のコントロール、メニュー構成の最適化、広告費の費用対効果の改善——こうした取り組みでキャッシュフローを押し上げれば、同じ借入残高でも償還年数は短くなります。
銀行との交渉でも、「いくら貸してほしい」ではなく「うちはこれだけ返せる体質です」と示せるほうが、融資はスムーズに進みます。返せる体質をつくること。
これが、資金調達力そのものを高める最善策です。
今日から始められるキャッシュフロー改善アクション
月次で「成績」を出す習慣をつくる
キャッシュフローの改善は、月次で数字を確認する習慣から始まります。
ここでいう「成績」とは、売上 − コスト合計 − 借入返済 = 1店舗が1ヶ月で生み出したキャッシュのことです。
帳簿上の利益ではなく、返済まで含めた「本当に手元に残ったお金」を毎月出す。
この成績がプラスなら、キャッシュは増えている。マイナスなら、たとえ黒字でもキャッシュは減っている。
毎月の成績を追うだけで、「先月よりコストが増えた」「返済負担が重い」といった経営課題が具体的に見えてきます。
複雑な管理会計の知識は不要です。まず、この1つの数字を毎月出すことから始めてみてください。
材料の発注サイクルと在庫管理を見直す
材料費は、意識しないと「なんとなく多め」に発注してしまいがちな項目です。
3ヶ月分のまとめ買いをしている場合、在庫が眠っている期間はその分だけキャッシュが寝ていることになります。
使い切れず期限切れで廃棄すれば、そのまま損失です。
週に1回、在庫を確認して必要な分だけ発注するサイクルに変えるだけで、平均在庫を大幅に減らせます。
これはコスト削減であると同時に、キャッシュの回転を速める効果があります。
予約枠とメニュー構成のコントロール
予約の空き枠は、そのまま「売上ゼロの時間」です。ここをどうコントロールするかで、キャッシュフローは変わります。
閑散期に割引で集客する方法もありますが、安易な値下げは客単価を下げるリスクがある。
むしろ考えるべきは、単価の高いメニュー(髪質改善トリートメント、ヘッドスパなど)の比率を上げることです。
原価率が低く、施術時間あたりの売上が高いメニューを戦略的に組み込むことで、同じ客数でもキャッシュフローを改善できます。メニュー構成の見直しは、売上を伸ばすための施策であると同時に、利益構造を変えるための経営設計でもあるのです。
広告費の費用対効果を数字で判断する
広告費は「かけなければ集客できない」と思い込みがちですが、本当にそのコストに見合ったリターンが出ているかを定期的に検証していますか。
ポータルサイトの掲載料、SNS広告、チラシ——それぞれの施策から何名の新規客が来て、そのうち何名がリピートしたのか。1人あたりの獲得コストはいくらか。
この計算をしないまま「とりあえず続けている」広告費は、キャッシュフローを圧迫する固定費に化けています。毎月の成績に対して広告費がどれだけの比率を占めているかを確認し、費用対効果が低いものは思い切って見直す。
その分のキャッシュを、リピート施策やスタッフ教育に回すほうが、中長期的なキャッシュフロー改善につながります。
まとめ
美容室のキャッシュフロー改善は、「経費を削る」「融資を受ける」だけでは根本的な解決になりません。
大切なのは、美容室特有のお金の流れを理解し、「いくら残すか」を設計することです。
この記事で紹介したポイントを振り返ると、利益とキャッシュフローはそもそも別物であること、返済は経費ではなく税引後利益から出ていくこと、消費税は売上の5%を目安にプールしておくこと、4大コストの合計を80%以内に収めること、安全キャッシュラインとキャッシュ余力の公式を知ること——これらはすべて、知っているかどうかの差です。
この記事で挙げた問題に心当たりがあるなら、まずは自分のサロンの「成績」を出すところから始めてみてください。
数字を1つ出すだけで、見え方が変わります。
整えることは難しくありません。知っているかどうかだけの差です。
もし数字の見方や改善の方向性について、一度話を聞いてみたいと思ったら、壁打ちミーティングという場があります。1時間、無料、売り込みなし。サロンの数字を一緒に見るだけの時間です。
でも逆に言えば、ここを整えれば利益は残る。
よくある質問
Q. キャッシュフロー計算書は小規模サロンでも作るべき?
中小企業や個人事業主の場合、正式なキャッシュフロー計算書を作成していないサロンがほとんどです。ただし、簡易的でいいので「月の売上」「コスト合計」「返済額」「手元に残った金額(成績)」の4つを毎月記録するだけで、キャッシュの流れは十分に見えるようになります。完璧な書類をつくることよりも、毎月1つの数字を出し続けることのほうが大切です。
Q. 消費税の支払いに備えるにはいくらプールしておけばいい?
美容室は人件費比率が高く仕入控除が少ないため、消費税の実質負担が重くなりやすい業種です。目安として、売上の約5%を消費税見込み額としてプールしておくことをおすすめします。月商200万円のサロンなら毎月10万円。専用の口座に分けておくと、納付時に慌てずに済みます。
Q. キャッシュレス決済の入金タイムラグにはどう対応すればいい?
決済代行会社によって入金サイクルは異なりますが、早期入金サービスを提供している会社もあります。手数料とのバランスを考えつつ、入金サイクルが短い決済サービスを選ぶことが有効です。それと同時に、少なくとも1ヶ月分の固定費に相当するキャッシュを手元に確保しておけば、入金タイムラグによる資金ショートは防げます。
Q. 借入があっても追加融資は受けられる?
借入残高があっても、追加融資を受けることは可能です。ただし銀行が見るのは「返済能力」です。借入償還年数が10年以内であれば一般的に融資は通りやすく、5年以内なら非常に高く評価されます。逆に10年を超える場合は、まず経営改善でキャッシュフローを押し上げ、返済能力を示すことが先決です。融資の審査は「借りたい金額」より「返せる体質」で決まります。


