- 美容室で36協定が必要になるケース
- 理美容業の週44時間特例と確認点
- 営業後の片付け・練習・会議の考え方
- 過半数代表の選出から届出後の管理まで
スタッフ3人の美容室で、予約が伸びた日は片付けや練習が終業時刻を超えている。
それでも「月の残業は少ないから、36協定はいらない」と考えていないでしょうか。
36協定は、長時間労働を認める書類ではありません。
法定労働時間を超える時間外労働または法定休日労働をさせる前に、適正な労働者代表と締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出るためのものです。
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監修者

野田 大吾郎
美容室経営に詳しい社会保険労務士。
人材定着、評価制度、労働条件の設計など、人に関わる経営課題を中心に、美容室の労務体制づくりを支援している。正解を押し付ける制度設計ではなく、サロンごとの働き方や現場の実情に合わせ、実際に運用できる仕組みを整えることを重視。スタッフとオーナー双方が無理なく働ける環境づくりを得意とする。
また、「美容サロンが申請すべき3つの助成金」を提唱し、助成金の活用支援においても豊富な実績を持つ。
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結論 先に実労働時間を把握し36協定を整える

打刻の前後にある準備、片付け、会議、練習の実態も確認します。
法定労働時間、特例、変形労働時間制、法定休日を確認します。
目的を明らかにし、全労働者が参加できる投票や挙手等で選出します。
実態に合う時間と事由を定め、時間外労働等をさせる前に届け出ます。
協定内容をスタッフへ周知し、実績と上限、有効期間を管理します。
36協定は残業代の支払いをなくさない
36協定を届け出ても、実際に法定時間外労働や法定休日労働をさせた場合の割増賃金は別途確認が必要です。
美容室で36協定が必要になるケース
原則の法定労働時間は1日8時間、1週40時間です。
この範囲を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合は、原則36協定の締結と届出が必要です。
一方、店舗の就業時刻を超えたことと、法定労働時間を超えたことは同じではありません。
| 状況 | 36協定の確認 | 併せて見るもの |
|---|---|---|
| 1日8時間を超える日がある | 必要になる可能性が高い | 休憩、変形労働時間制の適用 |
| 週の法定時間を超える | 必要になる可能性が高い | 週40時間か44時間特例か |
| 法定休日に出勤させる | 必要 | 就業規則と法定休日の特定 |
| 所定労働時間は超えたが法定内 | それだけで36協定必要とは限らない | 雇用契約、就業規則、賃金計算 |
パートやアルバイトでも、労働時間の実態によって36協定の対象になります。
業務委託契約という名称でも、実態が労働者に該当するかは別の論点です。
また、「定休日に出勤したら必ず法定休日労働」とは限りません。
法定休日は、法律上与える必要がある休日です。
週休2日制で休みが2日あるときは、どちらを法定休日とするかで、労働時間と割増賃金の判定が変わることがあります。
就業規則や雇用契約とシフト表の休日表示がずれていないかも確認します。
労働時間と店舗ルールを一緒に見直す場合は、美容室の就業規則の作り方も参考にしてください。
理美容業の週44時間特例を確認する
常時使用する労働者が10人未満の理美容業は、特例措置対象事業場として1週44時間が適用される場合があります。
ただし、1日8時間の原則は変わりません。
店舗数ではなく事業場単位の人数や業種区分を確認する必要があり、変形労働時間制を採用している場合は判定がさらに複雑です。
最初に、その事業場で常時使用する労働者数を、正社員だけでなくパート・アルバイトも含めて整理します。
次に、1日ごとの労働時間と週の合計を分けて、実際のシフトでどの日、どの週が法定時間を超えるのかを確認します。
週44時間の特例が認められる場合でも、1日8時間を超えた部分が自動的に法定内になるわけではありません。
「週44時間以内なら何時間働かせてもよい」と読まないことが大切です。
片付け・練習・ミーティングも実態で判断する
労働時間に該当するかは、名称やタイムカードの打刻時刻だけではなく、使用者の指揮命令下に置かれていたかで客観的に判断されます。
| 場面 | 労働時間になる可能性が高い例 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 開店準備・片付け | 出勤を求め、作業内容を指示 | 打刻、シフト、準備表 |
| ミーティング | 参加が必須で、欠席しにくい | 案内、議事録、評価ルール |
| 技術練習 | 日時・内容・参加を店舗が指示 | 練習表、指導記録、メッセージ |
| モデル施術 | 業務や評価の一環として実施 | 予約表、売上処理、指示内容 |
本人が「自主練習です」と言っていても、参加しないと評価が下がる、先輩が常に指導する、店が日時を決めるなどの実態があれば、労働時間に当たる可能性があります。
打刻後の作業を黙認していないか、予約表、入退店記録、レジ閉め時刻と勤怠記録を照合します。
残業上限と特別条項を正しく分ける
36協定で定める時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。
通常予見できない業務量の大幅な増加等の臨時的な特別の事情があり、特別条項を締結する場合でも上限があります。
| 区分 | 上限 | 注意 |
|---|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間 | 臨時的な特別の事情がなければ超えられない |
| 特別条項の年間 | 時間外労働年720時間以内 | 特別条項でも無制限ではない |
| 単月 | 時間外労働と休日労働の合計100時間未満 | 休日労働を含む |
| 複数月平均 | 時間外労働と休日労働の平均80時間以内 | 2〜6か月平均を確認 |
| 原則上限を超える月 | 1年に6か月以内 | 繁忙が常態の場合は運営を見直す |
年末や成人式前の繁忙だけで特別条項が必ず認められるわけではありません。
予約枠、準備、休憩、練習時間を先に見直すことが必要です。
過半数代表はオーナーが指名しない
過半数労働組合がない場合は、事業場のすべての労働者の過半数を代表する人を選びます。
正社員だけでなく、パートやアルバイトを含むすべての労働者が手続に参加できるようにします。
- 36協定を締結する代表者を選ぶ目的を明らかにする
- 投票、挙手、話し合い、持ち回り決議等の民主的手続で選ぶ
- 労働基準法上の管理監督者でない人を選ぶ
- 使用者の意向に基づいて選ばない
「店長だから代表」「一番長く働いているから代表」と自動的に決めるのは避けます。
過半数代表の要件や選出手続が不適切だと、36協定が無効になる可能性があります。
選出時は、対象者、選出目的、方法、実施日、結果を記録します。
後から見て、代表者がどのように選ばれたかを説明できる状態にしておくことが大切です。
小規模の美容室でも、オーナーが用意した名前に全員がサインするだけでは、民主的に選出した証拠として不十分になるおそれがあります。
届出後も勤怠・上限・有効期間を管理する
協定届の提出は、労働時間管理のスタートです。
日ごとの始業・終業時刻を客観的な記録で確認し、毎月の時間外労働、休日労働、年間累計を管理します。
36協定は作業場の見やすい場所への掲示・備え付け、書面交付等により労働者へ周知する必要があります。
毎月の確認項目
打刻漏れ、打刻前後の作業、時間外労働、休日労働、年間累計、特別条項の回数、健康確保措置、協定の更新日を一つの管理表で確認します。
強い繁忙が続くときは、上限の範囲内かだけで判断しません。
スタッフの健康、休憩の取得、予約の入れ方、練習計画、人員配置を見直します。
すでに法定時間外労働が発生しているのに未届と気づいた場合は、日付をさかのぼって届け出たように処理しません。
まず未記録の労働時間がないかを調べ、賃金・割増賃金の支払状況を確認します。
その上で、将来の運用を正す手続と過去の精算を分け、所轄の労働基準監督署または社労士へ相談します。
まとめ
美容室の36協定は、書類だけを作るのではなく、実際の働き方を記録してから整えます。
| 論点 | よくある漏れ | 今すぐ確認すること |
|---|---|---|
| 労働時間 | 準備・片付け・練習が勤怠外 | 予約表と打刻の差を見る |
| 法定時間 | 週40時間と44時間特例を混同 | 人数・業種・制度を個別確認 |
| 代表者 | オーナーが店長を指名 | 全労働者が参加できる選出を行う |
| 運用 | 届出後に実績を見ていない | 毎月の確認日と更新日を決める |
まず、直近の予約表、勤怠記録、練習・会議の予定を同じ日付で並べてください。
自店の特例適用、変形労働時間制、法定休日、特別条項の要否が不明な場合は、届出前に所轄の労働基準監督署または社労士へ確認します。
美容室オーナーのお金と働き方の悩みに寄り添うパートナー

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美容室オーナーが「ストレスなく、サロン経営に集中できる環境」をつくることを目指しています。
こんな悩みありませんか?
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- 数字や経営の話を、美容師仲間やスタッフには相談できず、孤独を感じている
- 決算の数字を見ても、何を改善すべきかわからない
- 設備投資やスタッフ採用の判断を、“なんとなく”でしてしまっている
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よくある質問
- 残業が少なくても36協定は必要ですか?
法定時間外労働または法定休日労働をさせる可能性があるなら、人数の多少ではなく、事前の締結・届出を確認します。
- 10人未満の美容室は必ず週44時間ですか?
必ずとは断定できません。
常時使用する労働者数、事業場の業種区分、変形労働時間制等を並べて個別に確認します。
- 自主練習は労働時間ではないですか?
名称だけでは決まりません。
参加の強制、日時・内容の指示、評価との関係など、指揮命令下にあったかを実態で確認します。
- 36協定を届ければ残業代は不要ですか?
不要にはなりません。
実際の労働時間に応じた賃金と割増賃金の支払いは別に確認が必要です。
- 36協定は毎年同じ内容でよいですか?
前年と同じ内容をそのまま使うのではなく、実際の勤怠、人数、予約枠、練習運用、上限の実績に合わせて見直します。
参考資料:厚生労働省「時間外労働の上限規制」「労働条件・職場環境に関するルール」「主要様式ダウンロードコーナー」、厚生労働省「労働時間の基本的ルール」、大阪労働局「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」


