美容室を経営する中で「経費管理」は欠かせません。
適切に経費を管理することで、経営の効率化はもちろん、税金の節約にも繋がります。この記事では、美容室オーナーが押さえておくべき経費の基本や実践的な節約法を、わかりやすく説明します。
リストや表を活用し、すぐに実践できるような形にしましたので、ぜひ参考にしてください。
監修者

西脇 敬久
株式会社DAM代表取締役。MBA、公認会計士、税理士の資格を所有。美容業界に特化した公認会計士として、美容院の顧客を多数抱える。美容院経営で必要な数字を明確にし、”誰でもわかる会計の見える化”で18%の利益率を目指す。美容院の会計に特化したセミナー講師としても活動中。
当社は美容業界に特化した会計サービスを提供。数字を活用し、人材流出を防ぎながら、18%の利益率を目指す経営支援を行います。会計業務にとどまらず、経営改善やスタッフ定着率向上のアドバイスを通じて、美容室経営の安定と成長をトータルサポートいたします。
1. 経費管理が美容室経営に重要な理由
美容室経営における経費管理は、経営状況を安定させ、健全な財務基盤を作るために欠かせません。
経費を適切に管理することで、税務面のメリットが得られるだけでなく、無駄を省き利益を最大化することができます。
また、経営者が経費管理をしっかりと行うことで、スタッフへの報酬や福利厚生、設備投資など、事業をより良く成長させるためのリソースを確保できます。
経費管理で得られるメリット
- 節税効果・・・経費を適切に計上することで、事業にかかる税金を減らせます。
- 経営状況が見える・・・どの項目にお金を使っているのかを把握し、無駄な支出を削減できます。
- 資金繰りの改善・・・経費削減により、毎月のキャッシュフロー(お金の流れ)を改善し、経営の安定性を高めます。
経費管理の重要性
経費管理を怠ると、税務署からの指摘や過大な税金支払いに繋がる可能性があります。
特に、美容室は現金のやり取りが多いため、経費を適切に計上していないと、税務調査が入ることもあります。
これによって時間や労力が無駄になり、最終的には経営にも悪影響を与えかねません。
2. 美容室の経費管理で押さえるべき項目
美容室経営では、日々発生する多くの経費を適切に管理することが重要です。
ここでは、特に重要な経費項目について、わかりやすく解説します。
2.1 賃料・固定費
美容室の経営において、賃料や共益費、駐車場代などの固定費が最も大きなコストを占めます。
これらの費用は毎月必ず発生するので、しっかり管理しておくことが重要です。
主な固定費:
- 店舗賃料・・・美容室を借りている場合、賃料全額を経費として計上
- 共益費・・・ビルや施設の共有部分にかかる費用
- 駐車場代・・・顧客やスタッフ用の駐車場代
自宅兼美容室の場合・・・家賃全額を経費として計上することはできません。事業に使っている部分のみ経費として認められます。例えば、家の一部をサロンとして利用している場合、その部分の家賃を経費にすることが可能です。
2.2 設備と備品
美容室には、シャンプー台やカット用の椅子、ドライヤー、アイロンなどの設備が必要です。
これらの設備は、長期間使用するものや消耗品に分かれます。
主な設備・備品:
- 美容機器・・・シャンプー台、ドライヤー、カット用の椅子など
- 消耗品・・・シャンプー、カラー剤、タオル、ケープなど
消耗品の経費計上・・・シャンプー、カラー剤、タオルなど、定期的に使う消耗品は「消耗品費」や「仕入れ」としてそのまま経費にできます。
ポイント:
- 10万円を超える設備は「固定資産」として計上し、減価償却を行う必要があります。例えば、シャンプー台や大型の美容機器などがこれに該当します。
- 小物類や消耗品はそのまま経費として落とせます。
2.3 水道光熱費
美容室では、電気代や水道代、ガス代などの光熱費が必ずかかります。
これらの費用は、業務に必要不可欠な経費として全額計上できます。
主な光熱費:
- 電気代・・・照明や美容機器の使用にかかる電力
- 水道代・・・シャンプーや掃除に使う水の費用
- ガス代・・・キッチンや暖房に使用するガス代
ポイント:
- 自宅兼美容室の場合、業務用の使用分のみ経費として計上します。例えば、家庭用と業務用の電気を一緒に使っている場合は、業務用の使用分のみ計上します。
2.4 広告宣伝費
美容室の集客には広告が欠かせません。チラシ、看板、SNS広告などの費用は全て「広告宣伝費」として計上できます。
広告宣伝費の例:
- チラシ印刷代
- SNS広告費(Instagram、Facebookなど)
- 看板設置費用
ポイント: 広告宣伝費をしっかり計上することで、税金の負担を減らし、集客にも繋がります。特にSNS広告などのデジタルマーケティングは、費用対効果が高く、無駄を省きつつ効果的な集客が可能です。
3. 労務管理と経費削減
経費管理だけでなく、スタッフの労務管理も非常に重要です。スタッフの働きやすさを支えることで、定着率が上がり、安定したサロン運営が可能になります。
3.1 福利厚生
スタッフのモチベーションや満足度を高めるために、福利厚生の充実は欠かせません。例えば、定期的な健康診断や保険の加入など、スタッフが安心して働ける環境を提供することが大切です。
福利厚生費:
- 健康診断・・・スタッフの健康を守り、仕事のパフォーマンス向上
- 保険加入・・・スタッフ向けの生命保険や医療保険
ポイント: 福利厚生費は全額経費として計上できます。スタッフが長期で働く環境を整えることが、サロンの成長に繋がります。
3.2 残業代の管理
スタッフが残業をする場合、残業代を適切に支払う必要があります。これを経費として計上することができますが、適正な管理が求められます。
残業代管理のポイント:
- 法定労働時間を超えた場合・・・残業代を支払い、経費として計上
- 残業申請の管理・・・時間外労働が発生した場合に適切に記録
ポイント: 労働基準法を守り、残業代の管理をしっかり行うことが、後々のトラブルを防ぎます。
4. 経費管理でサロン経営を強化する方法
経費管理を通じて、サロン経営を強化するための実践的な方法を紹介します。
4.1 定期的な経費の見直し
毎月、定期的に経費の見直しを行い、どこにお金がかかっているのかを把握しましょう。無駄な支出を削減し、効率的な経営を実現するためには、見直しが不可欠です。
見直すべき項目:
- 広告費や宣伝費の支出状況
- 光熱費の無駄遣い
- 消耗品の発注状況
4.2 経費削減のためのシステム化
経費管理をシステム化することで、手間を減らし、ミスを防げます。例えば、経費を自動で計算してくれる会計ソフトを導入したり、領収書のデジタル化を進めることが有効です。
導入すべきシステム:
- 会計ソフト(例: 弥生会計、freee)
- 領収書管理アプリ(例: Moneytree、Receipts)
ポイント: これらのツールを使うことで、経費計上が簡単になり、時間の節約にも繋がります。
4.3 確定申告をスムーズに
確定申告を行う際、経費を正確に計上することが大切です。日々の経費管理を丁寧に行い、税理士に相談しながら申告を進めましょう。経費の計上漏れを防ぐために、帳簿や領収書の整理が重要です。
確定申告準備:
- 毎月の経費を正確に記録
- 領収書を整理して保存
- 必要に応じて税理士に相談
まとめ
美容室の経費管理は、税金の節約や経営の効率化に繋がります。賃料や設備費、光熱費など、日々発生する費用をしっかり把握し、適切に計上することで、無駄な支出を減らし、利益を最大化できます。また、労務管理やスタッフの福利厚生も重要なポイントです。経費を賢く管理し、美容室の経営を安定させましょう。