美容室の月次試算表・月次報告書の見方|毎月チェックすべき数字と赤字を防ぐ打ち手

この記事でわかること

  • 月次試算表に何が書いてあり、どこだけ見ればいいか
  • 美容室オーナーが毎月チェックすべき5つの数字の正体
  • 4大コスト80%ルールを試算表上で確認する具体的な方法
  • 「材料費が増えている」「客数が変わらないのに利益が減った」などの異変を5分で発見する読み方
  • 試算表の異変ごとに取るべき打ち手(コストメタボ=費用が膨らみすぎた状態のタイプ別)

「試算表は毎月届いているけど、数字が多すぎてどこを見ればいいかわからない。」

開業3年目・1人サロン・月商70万円前後で、このひと言がそのまま当てはまるオーナーは少なくありません。

税理士が毎月試算表を作ってくれている。

でも届いても「利益が出ていれば大丈夫」という感覚だけで、細かい数字は見ないまま保存している。

その状態が3ヶ月続くと、気づいたときには材料費がじわじわ増え、広告費が積み上がり、手元に残るお金が減っていきます。

帝国データバンク(2025年)によれば、美容室の倒産は2025年1〜8月で157件・過去最多ペースです。

倒産したサロンの多くに共通しているのは、「気づいたときには手遅れだった」という点です。

試算表の読み方を少し変えるだけで、この「手遅れ」は防げます。

この記事では、税理士任せだった試算表を「毎月5分で異変を見つける地図」に変えるための読み方を、1人サロンオーナーの視点で具体的に解説します。

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目次

月次試算表とは何か・何が書いてあるか

試算表は「今月の売上・費用・利益」が1枚で確認できる地図です。

難しく読もうとする必要はなく、「費用の合計が売上の何%を占めているか」だけ毎月確認できれば、経営判断に十分使えます。

試算表に書いてある内容は、大きく3つに分かれます。

  • 売上:その月に施術・物販でいくら稼いだか
  • 費用:人件費・家賃・材料費・広告費など、何にいくら使ったか
  • 利益:売上から費用を引いた残り(経営の「余白」になる部分)

「損益計算書(PL)」という言葉を税理士から聞いたことがあるかもしれません。

難しそうな名前ですが、PL(損益計算書=その月にいくら稼ぎ、いくら使い、いくら残ったかを示す書類)を毎月の単位で確認できるようにしたものが月次試算表です。

試算表には科目が数十行並んでいることもあります。

しかし1人サロンオーナーが使うために必要な情報は、次の紹介する5点だけです。

試算表を「隅々まで理解するもの」ではなく「5点だけ見る地図」として捉え直すことが、この記事の最初のステップです。

美容室オーナーが毎月見るべき5つの数字

売上・4大コスト合計・材料費率・広告費率・営業利益の5点だけ毎月確認すれば、経営の健康状態は十分に把握できます。

以下の表に、5つの数字と確認の目安をまとめました。

チェック項目試算表上の場所目安・正解値
①売上(月次)売上高の合計行前月比・前年同月比で増減を確認
②4大コスト合計人件費+家賃光熱費+材料費+広告費を手計算売上の80%以内が正解値
③材料費率材料費÷売上×100目安は10〜15%以内
④広告費率広告宣伝費÷売上×100目安は10〜15%以内
⑤営業利益試算表の「営業利益」行、または売上−全費用売上の20%以上が余白の目標

1人サロンでオーナー自身が施術をしている場合、自分の給与を人件費に計上していないケースがよくあります。

この場合、試算表上の人件費比率が低く見えても、実態はオーナーの労働コストが見えていないだけです。

自分の給与相当額も人件費に含めて4大コストを計算しないと、スタッフを雇った瞬間に赤字に転落するという事態が起きます。

多くのサロンを見てきた中で、このパターンで経営が急に苦しくなるケースは非常に多く見られます。

4大コスト80%ルールで試算表を読む

人件費・家賃光熱費・材料費・広告費の4つを合計し、売上の80%を超えていたら「コストメタボ」のサインです。

この状態は即対処が必要です。

コストメタボとは、4大コストが膨らみすぎて経営の余白(利益)が消えている状態を指します。

例として、月商100万円のサロンで考えてみます。

費用項目金額(例)売上比率
人件費(オーナー給与含む)35万円35%
家賃・光熱費15万円15%
材料費15万円15%
広告費15万円15%
4大コスト合計80万円80%
余白(利益)20万円20%

4大コスト合計が80%ちょうどでも、余白はギリギリです。

この余白20%が、税金・返済・緊急時の備え・将来の投資すべてをまかなう分になります。

これが90%を超えると、毎月手元にお金が残らなくなります。

試算表を受け取ったら、まずこの4項目を足し算して80%ラインを超えているかどうかだけ確認してください。

ここがすべての経営判断の出発点になります。

「数字の異変」を5分で見つける読み方

前月比で材料費が3%以上増えている・客数が変わらないのに利益が減っている・広告費率が急に上がっている、この3パターンが出たら次の打ち手を即座に決めます。

試算表を全行読む必要はありません。

異変のシグナルは3つに絞れます。

シグナル①:材料費が前月比で3%以上増えている

客数や売上が変わっていないのに材料費だけが増えているケースです。

よくある原因は「使いすぎ」「在庫管理のズレ」「仕入れ価格の変動」の3つです。

材料費が売上の20%を超えると「技術メタボ」の状態で、広告費や家賃を抑えて全体のバランスを取り直す必要があります。

シグナル②:客数が横ばいなのに利益が減っている

来客数は変わっていないのに利益が減っている場合、どこかの費用が静かに増えています。

試算表で「4大コスト以外の費用」(消耗品・交際費・通信費など)が増えていないかを確認します。

またはメニュー単価が下がっていないか(クーポン多用・値引き慣行)もあわせてチェックします。

シグナル③:広告費率が急に上がっている

新規集客の費用を増やした月に多いパターンです。

広告費が売上の15%を超えると「マーケティングメタボ」の状態で、費用対効果(ROI=かけたお金が何倍で返るか)の検証が必須になります。

この3つのシグナルを試算表上で確認する作業は、慣れれば5分以内で終わります。

毎月「この3点だけ見る」と決めてしまうことが、試算表を経営に使うための最初の一手です。

試算表とPOSデータ・予約経路を紐づけて読む

試算表の広告費が増えた月に、POS(会計レジシステム)の新規客数と予約経路を照合すると「その広告費は新規客を連れてきたのか」が一目でわかります。

この確認をしないまま広告費を増やし続けると、費用だけが積み上がる状態から抜け出せません。

「広告費を増やしたのに手元にお金が残らない」という相談は、多くのサロンから聞こえてくる声です。

試算表だけを見ていると「広告費が増えた」という事実しかわかりません。

しかし「その広告費で新規客が来たのか」「来た客がリピートしたのか」は、予約ツールや会計システムの数字と照らし合わせて初めて見えてきます。

難しい操作は必要ありません。

毎月試算表の「広告費」の金額を確認したあと、予約管理の画面で「その月に何人の新規客がどこから来たか」を見るだけです。

例えば、ホットペッパービューティー経由の新規客が月10人・広告費が10万円だった場合、1人あたりの獲得コストは1万円です。

その10人のうち翌月に戻ってきたのが2人だけなら、8万円分の広告費は1回きりの客を呼んだだけです。

500サロン以上を支援してきた経験から言えば、このズレに気づかないまま「広告費をもっと増やせば売上が上がる」と繰り返しているサロンが目立ちます。

試算表の広告費欄を見て「増えているな」と感じたとき、次に予約画面で新規客の経路と人数を確認する。

この2つを毎月セットで見る習慣が、無駄な広告費を削る判断を可能にします。

試算表は「お金が出た記録」です。

「なぜそのお金が出たのか」を確認して初めて、次の月に何を変えるかが決まります。

試算表の異変別・具体的な打ち手一覧

コストメタボのタイプによって処方箋が異なります。

異変の種類を特定してから打ち手を決めることが、無駄のない改善につながります。

4大コストが80%を超えた場合、どのコストが突出しているかによってタイプが変わります。

それぞれのタイプ・試算表上の特徴・具体的な打ち手を以下にまとめます。

コストメタボのタイプ試算表上の特徴優先すべき打ち手
人材メタボ人件費が売上の40%超材料費・広告費・家賃を厳密に管理する。まず他の3コストを削って人件費の重さを相殺する
技術メタボ材料費が売上の20%超仕入れ先の見直し・在庫管理の徹底・施術メニューの原価計算(メニュー価格に対して材料費がいくらかかるか)を行う
マーケティングメタボ広告費が売上の15%超予約データで費用対効果を確認し、リピートにつながっていない媒体から予算を削る
ブランディングメタボ家賃・光熱費が売上の15%超新規集客強化で売上を上げるか、退去・移転の検討を早めに始める
隠れぽっちゃり型4大コスト全部が均等に高い「どの特化型になるか」を決め、1つのコストに集中投資しながら他を削る戦略を選ぶ

特に注意が必要なのが「隠れぽっちゃり型」です。

4大コストが全部「少し高め」の状態は、一見すると問題がないように見えます。

しかし合計すると80%を超えており、余白が静かに消えています。

「何が問題かわからない」という感覚のまま経営が続くため、最も発見が遅れやすいタイプです。

打ち手は「1つの軸を決めて特化する」ことです。

人材に投資するなら材料費・広告費・家賃を下げる。

技術で勝負するなら広告費を口コミに代替する。

戦略の軸を1つ決めることで、コスト配分が整理されます。

多くのサロンを見てきた中で、「全部大事だから全部にお金をかける」という選択をしているサロンほど、コストメタボから抜け出せずにいる傾向があります。

月次試算表を経営判断に使うための仕組み

税理士から毎月10日以内に試算表を受け取り、5つの数字をチェックシートに転記する習慣を作るだけで、赤字の発見が2〜3ヶ月早まります。

試算表を「経営判断に使う地図」にするために必要なのは、難しい財務知識ではありません。

「受け取るタイミング」と「転記する習慣」の2つだけです。

多くのサロンを見てきた中で、試算表の活用がうまくいっているオーナーはほぼ例外なく同じことをしています。

  1. 前月の試算表を毎月10日以内に税理士からもらう(遅れる場合は「10日以内に送ってほしい」と明確に依頼する)
  2. 5つの数字だけを専用のチェックシートに転記する(売上・4大コスト合計・材料費率・広告費率・営業利益)
  3. 前月比で変動が大きい項目を1つ選んで原因を考える(全部考えなくていい・1項目だけでいい)
  4. 3つの異変シグナルに該当するものがあれば、翌週中に打ち手を1つ決める

この4ステップは、慣れれば月に1回・15分以内で完結します。

試算表の受け取りが遅れると、問題を発見したときには既に2〜3ヶ月が経過しています。

材料費の肥大化も、広告費の無駄も、2〜3ヶ月放置すれば数十万円単位の損失につながります。

チェックシートはExcelでも手書きのノートでも構いません。

大切なのは「毎月同じ5点を同じタイミングで見る」という繰り返しを仕組みにすることです。

その仕組みが定着したとき、試算表は初めて「毎月届いて保存される書類」から「赤字になる前に異変を知らせる地図」に変わります。

まとめ

この記事で解説してきた内容を、以下の表に整理します。

ポイント問題の本質今すぐできること
月次試算表の役割届いても何を見るか決まっていないので使えていない「5つの数字だけ見る」と決める
4大コスト80%ルール合計が80%超(コストメタボ)になっていても気づかない毎月4項目を足して80%ラインを確認する
異変シグナル3パターン材料費増・利益減・広告費急上昇を見逃して手遅れになる前月比で3点だけチェックする習慣を作る
POSデータとの紐づけ広告費の費用対効果が計算されず無駄に積み上がる試算表の広告費を見たら、予約画面で新規客の経路と人数を確認する
仕組み化試算表の受け取りが遅く、問題発見が2〜3ヶ月遅れる税理士に「毎月10日以内に送付」を明確に依頼する

今月から取り組めるアクションをまとめます。

  • 税理士に「毎月10日以内に試算表を送ってほしい」と伝える
  • 試算表が届いたら、売上・4大コスト合計・材料費率・広告費率・営業利益の5点を転記するチェックシートを作る
  • 4大コストを足して80%ラインを超えていないか毎月確認する
  • 材料費・利益・広告費の3点で前月比の異変シグナルを確認する
  • 広告費が増えた月は予約データで新規客の経路と人数を照合する

試算表は「作って保存するもの」ではありません。

「毎月5分で経営の異変を見つける地図」として使えたとき、赤字になる前に手を打てる経営が始まります。

よくある質問

Q. 試算表と確定申告の決算書は何が違うのですか?

A. 決算書は年に1回・1年分の集計で税務申告に使う書類です。

月次試算表はその月ごとの売上・費用・利益を確認するための中間的な書類で、税理士が毎月作成します。

経営判断に使うのは月次試算表で、決算書は年間のまとめとして確認するものです。

Q. 税理士に任せているので試算表を自分で読まなくてもいいのでは?

A. 税理士の役割は「正確に記録・申告すること」です。

「コストが膨らんでいるから次の月はどこを削るか」という経営判断は、オーナー自身がしなければなりません。

試算表を税理士に丸投げしたまま経営判断に使わないと、問題が起きてから2〜3ヶ月後に気づくことになります。

5点チェックだけでも毎月自分でやることをおすすめします。

Q. 1人サロンでオーナーが施術もしている場合、人件費はどう計算しますか?

A. オーナー自身がプレイヤーとして施術している場合も、自分の給与相当額を人件費として計上することをおすすめします。

計上しないと「利益が出ている」と思っていても、スタッフを雇った瞬間に赤字に転落するリスクがあります。

自分が担当している施術時間に応じた給与相当額を人件費に含めて、4大コストを計算してください。

Q. 材料費率が高いときに最初にやるべきことは何ですか?

A. まず「在庫の確認」と「仕入れ記録の見直し」から始めます。

使い切れていない材料が棚に残っていないか、仕入れ量が実際の使用量と合っているかを確認してください。

それでも改善しない場合は、メニューごとの材料原価(メニュー価格に対して材料費がいくらかかるか)を計算し、原価率が高いメニューの価格見直しや施術手順の標準化を検討します。

Q. 試算表を見て問題を発見したあと、税理士に相談すべき内容はありますか?

A. 「4大コストの合計が80%を超えている月が続いている」「特定の費用が前月比で急増している」という事実を具体的な数字で伝えると、税理士も原因を一緒に探りやすくなります。

また、助成金(採用・設備投資など)の活用については税理士や社会保険労務士に相談できます。

助成金を使わないサロンは年間100万円以上の機会を逃している可能性があるため、気になる制度があれば積極的に確認することをおすすめします。

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