「美容師でも産休・育休って取れるの?」
取れます。産休も育休も法律で定められた労働者の権利であり、美容師も例外ではありません。
ただし、「取れる」のは雇用契約を結んでいる正社員やパート・アルバイトの場合です。
業務委託(フリーランス)で働いている美容師は、雇用主がいないため産休・育休制度の対象外になります。
さらに、制度があることと「実際に取れる環境があること」は別の話です。
小規模サロンでは人手不足から「産休を取ると言い出しにくい」「復帰後のポジションがない」といった現実的な壁がある。
この記事では、美容師の産休・育休について、取れる条件、もらえるお金と給付金の具体的な計算方法、社会保険料の免除、フリーランスの場合の対策、復帰に向けた準備、オーナーが整えるべき体制と活用できる助成金まで、スタッフとオーナーの双方の視点で解説します。
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監修者


野田 大吾郎
美容室経営に詳しい社会保険労務士。
人材定着、評価制度、労働条件の設計など、人に関わる経営課題を中心に、美容室の労務体制づくりを支援している。正解を押し付ける制度設計ではなく、サロンごとの働き方や現場の実情に合わせ、実際に運用できる仕組みを整えることを重視。スタッフとオーナー双方が無理なく働ける環境づくりを得意とする。
また、「美容サロンが申請すべき3つの助成金」を提唱し、助成金の活用支援においても豊富な実績を持つ。
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産休の基本|期間・条件・対象者
産休とは
産休(産前産後休業)とは、出産前後に取得できる休業制度です。労働基準法で定められており、雇用されているすべての女性労働者が対象です。
産休の期間:
- 産前休業:出産予定日の6週間前から取得可能(双子以上の場合は14週間前)
- 産後休業:出産翌日から8週間(このうち最初の6週間は就業禁止。6週間経過後は本人が希望し、医師が認めた場合のみ就業可能)
産休の対象者
- 正社員:取得可能
- パート・アルバイト:取得可能(雇用形態に関係なく対象)
- 派遣社員:取得可能
- 業務委託(フリーランス):対象外(雇用契約がないため)
産休は「雇用されているすべての女性労働者」に認められた権利であり、勤続年数や雇用形態の条件はありません。入社1年未満でも取得できます。
サロン側が産休の取得を拒否することは違法です。
育休の基本|期間・条件・対象者
育休とは
育休(育児休業)とは、1歳に満たない子どもを養育するために取得できる休業制度です。育児・介護休業法に基づき、原則として男女ともに取得が可能です。
育休の期間:
- 原則:子どもが1歳になる前日まで
- 延長:保育所に入れないなどの事情がある場合、最長2歳まで延長可能
育休の取得条件
育休を取得するには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 雇用保険に加入していること
- 育休開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12カ月以上あること
有期雇用契約(パート・契約社員など)の場合は、追加条件として「子が1歳6カ月に達する日までに、労働契約の期間が満了することが明らかでないこと」が求められます。
産後パパ育休(出生時育児休業)
子どもの出生後8週間以内に、最長4週間(28日)の休業を2回に分けて取得できる制度です。
男性美容師も対象であり、夫婦で育休を取得すれば、それぞれに育児休業給付金が支給されます。
産休・育休中にもらえるお金
産休・育休中はサロンから給与が支払われないケースが多いですが、以下の給付金・一時金を受け取ることができます。
① 出産育児一時金(50万円)
子ども1人の出産につき50万円が支給される制度です。
ポイント:
- 健康保険に加入していれば誰でも対象(国民健康保険でもOK)
- フリーランスでも受け取れる
- 直接支払制度を利用すれば、病院への支払いに直接充当できる
② 出産手当金(産休中の収入保障)
産休中に給与が支払われない場合、健康保険から支給される手当です。
対象者:
- 会社の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に加入している被保険者本人
- 国民健康保険の加入者は対象外(フリーランスは受け取れない)
支給額の計算:
- 1日あたり:標準報酬日額(直近12カ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30)× 2/3
支給期間:
- 出産予定日の42日前〜出産翌日から56日目まで(合計約98日間)
月収25万円の美容師の場合のシミュレーション:
- 標準報酬日額:約8,333円
- 1日あたりの出産手当金:約5,555円
- 98日間の合計:約54万円
③ 育児休業給付金(育休中の収入保障)
育休中に雇用保険から支給される給付金です。
対象者:
- 雇用保険に加入していること
- 育休開始前の2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の月が12カ月以上あること
支給額の計算:
- 育休開始から180日目まで:賃金日額 × 支給日数 × 67%
- 181日目以降:賃金日額 × 支給日数 × 50%
賃金日額の計算:育休開始直前6カ月間の給与合計 ÷ 180日
月収25万円の美容師の場合のシミュレーション:
- 賃金日額:25万円 × 6カ月 ÷ 180日 = 約8,333円
- 最初の6カ月(67%):約8,333円 × 30日 × 67% = 月額約16.7万円
- 6カ月以降(50%):約8,333円 × 30日 × 50% = 月額約12.5万円
支給は原則2カ月に1回まとめて振り込まれます。
もらえるお金の合計シミュレーション(月収25万円・子どもが1歳まで育休取得)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 出産育児一時金 | 50万円 |
| 出産手当金(約98日間) | 約54万円 |
| 育児休業給付金(6カ月間・67%) | 約100万円 |
| 育児休業給付金(4カ月間・50%) | 約50万円 |
| 合計 | 約254万円 |
さらに、産休・育休中は社会保険料が免除されるため、実質的にはさらに手取りが増える計算になります。
産休・育休中の社会保険料の免除
産休・育休中は、厚生年金保険料と健康保険料の支払いが免除されます。
免除のポイント:
- スタッフ本人の負担分だけでなく、サロン(事業主)の負担分も免除される
- 免除されている期間も、社会保険の加入は継続される(将来の年金額に影響しない)
- 免除の手続きはサロン側(事業主)が行う
月収25万円の場合の社会保険料免除額の目安:
- 本人負担分:月額約3.5万円
- サロン負担分:月額約3.5万円
- 合計月額約7万円 × 産休・育休期間(約14カ月)= 約98万円の免除
つまり、給付金約254万円+社会保険料免除約98万円= 合計約352万円分のサポートを受けられる計算です。
この数字を知らずに「産休を取らずに辞める」という選択をすると、数百万円の機会損失になります。
辞めた場合と産休・育休を取った場合の比較
「妊娠したらサロンを辞めよう」と考える美容師は少なくありませんが、辞めた場合ともらえるお金の差は非常に大きい。
| 項目 | 産休・育休を取得 | 退職 |
|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 50万円 | 50万円(国保でも受給可) |
| 出産手当金 | 約54万円 | なし(退職後は対象外になるケースあり) |
| 育児休業給付金 | 約150万円 | なし(退職した場合は失業手当のみ) |
| 社会保険料免除 | 約98万円分 | なし |
| 合計 | 約352万円 | 約50万円+失業手当(約50万円) |
差額は約200万円以上。
復帰するかどうかは後で決められます。まずは産休・育休を取得して、給付金を受け取りながら将来の働き方を考えるのが経済的に賢い選択です。
フリーランス美容師の場合
業務委託(フリーランス)で働いている美容師は、雇用契約を結んでいないため、以下の制度は対象外です。
フリーランスが受け取れないもの:
- 出産手当金(会社の健康保険加入者のみ対象)
- 育児休業給付金(雇用保険加入者のみ対象)
- 産休・育休中の社会保険料免除
フリーランスでも受け取れるもの:
- 出産育児一時金(50万円。国民健康保険でも対象)
- 妊婦健診の費用補助(自治体による。14回程度で約10万円前後)
- 児童手当
- 子ども医療費助成
- 国民年金保険料の免除(産前産後期間の4カ月間)
フリーランス美容師が妊娠した場合の備え:
- 出産前までに生活費の6カ月〜1年分を貯蓄しておく
- パートナーが会社員の場合、パートナー側の育休取得を検討する
- 復帰後の働き方(シェアサロン・業務委託・時短勤務など)を事前に計画する
- お客さまへの引き継ぎ・休業のお知らせを計画的に行う
- 自治体の出産・育児支援制度を事前に調べておく
フリーランスには産休・育休の制度がない分、「自分で計画を立て、自分で備える」ことが前提になります。
復帰に向けた準備|美容師が考えるべきこと
復帰のタイミング
育休からの復帰タイミングは、保育所の入所時期に左右されるケースが多い。4月入所を狙う場合、前年の秋〜冬に申し込みを行う必要があります。
保活(保育所探し)は育休中の大きなタスク。「入所できなかった場合は育休を延長できる」制度を活用しつつ、早めに情報収集を始めましょう。
復帰後の働き方
産休・育休から復帰した美容師が直面する課題:
- 以前の指名客が他のスタッフに移っている可能性がある
- ブランクによる技術力の低下への不安
- 子どもの急な体調不良で休まなければならない日がある
- 土日出勤が難しくなる場合がある
- 営業時間いっぱいまで働けない場合がある
復帰後に検討すべき働き方:
- 時短勤務(育児・介護休業法で、3歳未満の子を養育する労働者は時短勤務を請求可能)
- 勤務日数の調整(週4日勤務など)
- 早番・遅番のシフト調整
- 復帰直後は新規客の割合を増やし、徐々に指名を取り戻す計画を立てる
復帰前にやっておくこと
- サロンと復帰時期・勤務条件を事前に話し合う
- 保育所の申し込みを早めに行う
- 子どもの急な体調不良時のバックアップ体制(祖父母・病児保育など)を確認する
- ブランク中も技術をキャッチアップする(SNSでトレンドを追う、オンラインセミナーを受講するなど)
- お客さまへの復帰のお知らせを計画する(SNS・DMなど)
オーナーがやるべきこと
産休・育休はサロンにとっても「投資」
美容師が産休・育休を取れずに退職すると、サロンは指名客を抱えたスタッフを失うことになります。新規採用と育成にかかるコストを考えれば、産休・育休を整備して復帰してもらう方が経営上のメリットは大きい。
オーナーが整備すべきこと
- 就業規則に産休・育休に関する規定を明記する
- 社会保険の加入状態を確認する(健康保険と雇用保険に加入していなければ給付金が受け取れない)
- 産休・育休中の業務の引き継ぎ体制を整える
- 復帰後の時短勤務・シフト調整の仕組みをつくる
- 産休・育休の手続き(社会保険料免除の届出、育児休業給付金の申請など)をサロン側が確実に行う
活用できる助成金:両立支援等助成金
産休・育休を取得したスタッフの職場復帰を支援したサロンが受給できる助成金です。
両立支援等助成金のポイント:
- スタッフの育休取得と職場復帰を支援する制度を整備し、実際に復帰させた場合に支給される
- 数十万円規模の受給が可能
- 美容業界は産休・育休が多い業種であるため、この助成金との相性は非常に良い
助成金の申請は要件が複雑なため、美容業界に詳しい社会保険労務士に相談するのがおすすめです。
まとめ
| テーマ | ポイント |
|---|---|
| 産休 | 出産予定日の6週間前〜出産後8週間。雇用されている女性全員が対象。勤続年数の条件なし |
| 育休 | 子が1歳(最長2歳)まで。雇用保険に加入し、一定の勤務実績があることが条件。男女とも取得可能 |
| もらえるお金 | 出産育児一時金50万円+出産手当金+育児休業給付金。月収25万円で合計約254万円 |
| 社会保険料免除 | 産休・育休中の厚生年金・健康保険料が本人・サロン双方とも免除。約98万円分 |
| 辞めた場合との差 | 産休育休取得で約352万円 vs 退職で約100万円。差額は約200万円以上 |
| フリーランスの場合 | 出産手当金・育児休業給付金は対象外。出産育児一時金50万円と国民年金保険料免除のみ |
| オーナーの対応 | 就業規則の整備 / 社会保険の加入確認 / 復帰体制の構築 / 両立支援等助成金の活用 |
美容業界では「産休・育休は取りにくい」というイメージが根強くあります。
しかし、制度を正しく理解し活用すれば、出産後も美容師としてのキャリアを続けることは十分に可能です。
スタッフの立場では、「辞める」前に「産休・育休を取得する」選択肢を検討する。それだけで数百万円の差が生まれます。
オーナーの立場では、産休・育休を取れる環境を整えることが、優秀なスタッフの定着と採用力の向上につながります。さらに、両立支援等助成金を活用すれば、サロンの経済的な負担も軽減できます。
産休・育休の整備は、スタッフのためだけでなく、サロン経営のためでもある。
ぜひ参考にしてください。
よくある質問
Q. 入社1年未満でも産休は取れますか?
はい。産休(産前産後休業)は労働基準法に基づく権利であり、勤続年数の条件はありません。入社1年未満でも、入社直後でも取得できます。
ただし、育休については「育休開始前の2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の月が12カ月以上あること」が条件のため、入社1年未満の場合は育休が取れないケースがあります。転職のタイミングには注意が必要です。
Q. パートやアルバイトでも産休・育休は取れますか?
はい。パート・アルバイトであっても、雇用されていれば産休は取得可能です。
育休についても、雇用保険に加入しており、勤務実績の条件を満たしていれば取得できます。雇用保険の加入条件は「週の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用の見込みがある」ことです。
Q. 産休・育休中も社会保険の保障は継続されますか?
はい。産休・育休中は社会保険料の支払いが免除されますが、健康保険や厚生年金の加入自体は継続されます。
つまり、保険料を払っていなくても病院にかかれますし、将来の年金額にも影響しません。この「免除されても保障が続く」点は非常に大きなメリットです。
Q. 男性美容師も育休を取得できますか?
はい。育休は男女ともに取得可能です。さらに、産後パパ育休(出生時育児休業)として、子の出生後8週間以内に最長4週間の休業を2回に分けて取得できます。
夫婦で育休を取得した場合、それぞれに育児休業給付金が支給されます。さらに、夫婦で育休を取得すると給付金の支給期間が子どもが1歳2カ月になるまで延長されます(パパ・ママ育休プラス)。
Q. 産休・育休から復帰したら、指名客はゼロからやり直しですか?
復帰後に以前の指名客がすべて戻ってくるとは限りません。長期間の休業中に他のスタッフに移った指名客もいるでしょう。
ただし、産休前に「復帰予定」をお客さまに伝えておくこと、復帰時にSNSやDMで復帰のお知らせを出すことで、戻ってきてくれるお客さまは多い。また、ママ美容師としてのキャリアは、同世代の子育て中のお客さまとの共感ポイントにもなります。
復帰直後は新規客の割合を増やしながら、徐々に指名を取り戻していく計画を立てましょう。

