美容室の減価償却とは?内装・シャンプー台・設備の耐用年数と正しい経費処理を解説

この記事でわかること
  • 減価償却とは何か、なぜ必要なのか
  • 美容室で減価償却の対象になるもの・ならないもの
  • 内装工事・シャンプー台・機器類の耐用年数
  • 定額法・定率法の違いと計算の考え方
  • 減価償却費とキャッシュフローの関係(ここが重要)
  • 少額減価償却資産の特例など、知っておきたい節税のポイント

「シャンプー台を買ったけど、全額その年の経費にはならないって本当?」 「内装工事費は何年かけて経費にすればいいの?」

美容室を開業したばかりのオーナーや、独立して初めて確定申告を経験するオーナーが、最初に戸惑うのがこの「減価償却」の概念です。

結論から言うと、10万円以上で1年以上使う資産は、購入した年に全額経費にできません。 法律で定められた耐用年数に応じて、毎年少しずつ経費に計上していく仕組みが減価償却です。

この仕組みを正しく理解するかどうかで、節税額と経営判断が大きく変わります。

ただし、もう一つ重要なことがあります。 減価償却費は経費として計上されますが、キャッシュ(現金)は動きません。 この点を理解していないと、「帳簿上は黒字なのにお金がない」という状況が生まれます。

この記事では、美容室オーナーが知っておくべき減価償却の基本から、経営への影響まで分かりやすく解説します。

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監修者

公認会計士・税理士
西脇 敬久

MBA、公認会計士、税理士の資格を有し、美容業界に特化した公認会計士・税理士として多数の美容室を支援。
決算書や試算表を専門家だけのものにせず、経営者が経営判断に使える形へと整理することを強みとしている。
美容室経営において本当に見るべき数字を明確にし、「誰でもわかる会計の見える化」を通じて、利益構造やコストバランスをシンプルに把握できる財務設計を行う。美容室向けの会計セミナー講師としても活動中。

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目次

減価償却とは?まず基本をおさらいする

「価値が減っていく資産」を分割して経費にする仕組み

減価償却(げんかしょうきゃく)とは、10万円を超える固定資産の購入費用を、その耐用年数(使える期間)にわたって少しずつ経費に計上していく会計処理のことです。

「なぜ一括で経費にできないの?」と疑問に思う方も多いはずです。

理由は、資産の「使われる期間」と「収益を生む期間」を合わせるためです。

たとえば50万円のシャンプー台を買ったとします。 このシャンプー台は1年で壊れるわけではなく、5年以上使い続けます。 5年間にわたって売上に貢献するのに、買った年だけ全額経費にするのは実態と合いません。

そこで、5年かけて毎年10万円ずつ経費に計上するというのが減価償却の考え方です。

耐用年数とは何か

耐用年数とは、その資産が使えると想定される期間のことです。

重要なのは、これが「実際に使える年数」ではなく、国税庁が法律で定めた「法定耐用年数」であるという点です。

実際には10年使えるシャンプー台でも、法定耐用年数が5年であれば、5年で減価償却の計算をします。

美容室オーナーが自分で耐用年数を決めることはできません。 国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」に基づいて計算します。

美容室で減価償却の対象になるもの・ならないもの

減価償却の対象になるもの(10万円以上・1年以上使うもの)

美容室で減価償却の対象になる主な資産は以下の通りです。

固定資産(器具・備品):

  • シャンプー台・シャンプーボウル
  • セット椅子・カラーリング椅子
  • 鏡・ミラーユニット
  • パーマ機器・ヘアスチーマー
  • パソコン・POSレジシステム

建物・内装関係:

  • 内装工事費(壁・床・天井・照明)
  • 給排水設備工事
  • 電気工事

上記はいずれも1つ(1セット)の購入金額が10万円以上の場合、減価償却の対象となります。

減価償却の対象にならないもの(消耗品費として全額経費)

以下のものは、購入した年に全額経費(消耗品費)として計上できます。

  • ハサミ・コーム・ブラシ(10万円未満のもの)
  • タオル・ケープ・グローブ・使い捨て用品
  • シャンプー・カラー剤・パーマ液などの材料
  • ドライヤー・コテ(10万円未満のもの)

「1個あたりの金額が10万円未満か」が判断のポイントです。 複数まとめて買っても、1個あたりが10万円未満であれば消耗品費として扱えます。

美容室でよく使う資産の耐用年数一覧

美容室でよく登場する資産の法定耐用年数をまとめます。

資産の種類耐用年数
シャンプー台・美容機器類5年
セット椅子・什器類5年
パソコン4年
内装工事(賃貸の場合)10〜15年が多い
内装付帯設備(シャンプー台等を含む場合)5年で設定することが多い
看板3年(金属製は20年)
観葉植物15年

美容室の器具・備品は、多くが5年で統一されています。 これは国税庁の耐用年数表で「理容又は美容機器」として分類されているためです。

内装工事費の耐用年数は複雑

内装工事費は少し複雑です。

一般的には、賃貸での内装工事の耐用年数は10〜15年とされています。 ただし、美容室ではシャンプー台などの付帯設備を含めて「5年」で設定するケースが多いです。

考え方としては、内装工事全体を以下のように分けることが多いです。

  • 内装工事部分(壁・床・天井など):10年前後
  • 付帯設備部分(シャンプー台の配管工事など):5年前後

具体的な計算方法は、税理士と相談して決めることをおすすめします。

減価償却の計算方法:定額法と定率法

減価償却の計算方法には、主に2種類あります。

定額法(毎年同じ金額を計上)

個人事業主は原則として定額法を使います。

計算式はシンプルで、毎年同じ金額を経費計上します。

取得価額 × 定額法の償却率(= 1 ÷ 耐用年数)

たとえば50万円のシャンプー台(耐用年数5年)の場合: 50万円 ÷ 5年 = 毎年10万円を経費計上

5年間、毎年10万円ずつ計上し続けます。

定率法(最初が多く、徐々に減る)

法人は原則として定率法を使います。

最初の年が最も多く経費計上でき、年を追うごとに金額が減っていきます。 初年度の節税効果が高い分、後半は少なくなります。

方法向いている人特徴
定額法個人事業主(原則)毎年同じ金額。安定している
定率法法人(原則)初年度が多い。前半の節税効果が大きい

どちらの方法を使うかは、個人・法人の区分で原則が決まっていますが、届け出によって変更できる場合もあります。詳しくは税理士に確認しましょう。

月割りで計算することに注意

減価償却は年割りではなく月割り(月数に応じた按分)で計算します。

たとえば、11月にシャンプー台を購入した場合(個人事業主・12月末決算): その年に計上できるのは、11月・12月の2か月分だけです。

「決算直前に高額設備を買って全額経費にしよう」と考えても、月割り計算になるためその年に計上できる金額はわずかです。 購入タイミングも計画的に考えることが大切です。

少額減価償却資産の特例を活用する

美容室オーナーが知っておきたい節税ポイントとして、少額減価償却資産の特例があります。

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

青色申告を行っている中小企業(個人事業主・法人)が対象です。

取得価額が30万円未満の資産については、通常の減価償却を行わず、購入した年に全額を経費として計上できる特例です。

たとえば25万円のシャンプー台を購入した場合:

  • 通常:5年かけて毎年5万円ずつ経費計上
  • 特例適用:購入した年に25万円全額を経費計上

年間合計300万円を上限に適用できます。

この特例を使えるかどうかは以下の条件を満たす必要があります。

  • 青色申告をしている
  • 中小企業者等に該当する(資本金1億円以下など)
  • 適用期限内に取得した資産であること(期限は定期的に延長されているため要確認)

一括償却資産(3年均等償却)

取得価額が10万円以上20万円未満の資産については、3年間で均等に経費計上できる「一括償却資産」として処理できます。

通常の法定耐用年数とは無関係に、3年で償却できる点がメリットです。 たとえばパソコン(耐用年数4年)を15万円で購入した場合、3年で5万円ずつ計上できます。

減価償却費とキャッシュフローの関係(ここが最重要)

多くの解説記事がここを飛ばしています。 美容室オーナーにとって、最も重要な理解ポイントです。

減価償却費は「お金が出ていかない経費」

減価償却費は、損益計算書(P/L)には経費として計上されます。 しかし実際のキャッシュ(現金)は、設備を買った時点でもう出ていっています。

つまり減価償却費は、「過去に出て行ったお金を分割して費用に振り替えているだけ」です。

月次の経営を把握するためのツール(サロンツウシンボなど)では、減価償却費はキャッシュの動きと一致しないため、その他のコストには含めません。

「黒字なのにお金がない」の原因のひとつ

美容室オーナーからよく聞かれる「帳簿上は黒字なのにお金が足りない」という悩み。 その原因のひとつが、この減価償却費の扱いです。

具体的に見てみましょう。

開業初年度に1,000万円の内装工事を行ったとします。 内装を10年で償却する場合、毎年100万円が減価償却費として経費計上されます。

帳簿上:

  • 売上 1,500万円
  • 経費(人件費・材料費など) 1,200万円
  • 減価償却費 100万円
  • 利益 200万円

この帳簿では200万円の利益が出ています。 しかし実際には、内装費1,000万円はすでに支払い済みです。

キャッシュの動きを見ると、開業時にまとめて1,000万円が出ていったため、帳簿の利益とは大きな差があります。

「利益 ≠ 手元にあるお金」という構造を理解することが、美容室経営の数字管理の出発点です。

返済も「キャッシュが出ていくのに経費にならない」

もう一つ合わせて理解してほしいのが、借入返済との関係です。

減価償却費は「お金が出ていかない経費」ですが、借入返済はその逆です。

借入返済は「お金が出ていくのに経費にならない」のです。

設備投資のために借入をした場合:

  • 設備購入時:減価償却費として毎年経費計上(キャッシュ動きなし)
  • 借入返済時:経費にならない(キャッシュは出ていく)

この2つの動きが重なることで、帳簿上の利益と手元のキャッシュの差が生まれます。

月次で「売上・経費・キャッシュ残高」を把握するサイクルを作ることが、この差を把握するための第一歩です。

中古設備を購入した場合の耐用年数

中古の設備を購入した場合、耐用年数の計算方法が変わります。

中古資産の耐用年数の考え方:

  • 法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数 × 0.2(20%)で計算
  • 法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数 – 経過年数)+ 経過年数 × 0.2

ただし、新品価格の半額以上で購入した中古資産は、新品と同じ耐用年数を適用します。

中古のシャンプー台を安く購入できれば、耐用年数が短くなり、1年あたりの経費計上額が増えます。 これは節税の観点から有利になるケースがあります。

まとめ

項目ポイント
減価償却とは10万円以上・1年以上使う資産を、耐用年数にわたって分割して経費計上する処理
美容機器の耐用年数シャンプー台・美容機器類はほぼ5年
内装工事の耐用年数10〜15年が基本。付帯設備と合わせて5年にするケースも多い
計算方法個人事業主は定額法が原則、法人は定率法が原則
月割り計算取得月から月数に応じて按分。期末購入は計上額が少ない
少額減価償却資産の特例30万円未満は購入年に全額経費計上可能(青色申告者・中小企業が対象)
キャッシュとの関係減価償却費はキャッシュが動かない経費。利益とキャッシュは一致しない

減価償却は、正しく理解すれば節税の大切な手段になります。

同時に、「減価償却費=キャッシュが出ていかない経費」という性質を理解することが、サロン経営の数字を正確に読む力につながります。

帳簿上の利益とキャッシュの両方を見る習慣を持つことが、美容室経営を安定させる第一歩です。

ぜひ参考にしてください!

よくある質問

Q. シャンプー台を分割払いやリースで導入した場合も減価償却しますか?

A. 扱いが異なります。分割払い(割賦購入)の場合は、資産を所有しているため減価償却の対象になります。一方、リースの場合はオーナーが資産を所有しているわけではないため、基本的に減価償却ではなく「リース料」として毎月の経費計上になります。ただしリース契約の内容によって処理が変わることもあるため、税理士への確認をおすすめします。

Q. 開業前に購入した設備は減価償却できますか?

A. できます。開業前に購入した設備・備品は「開業費」として繰延資産に計上し、開業後に减価償却します。ただし、減価償却の開始は「事業の用に供した日(実際に使い始めた日)」からです。購入日から使い始めるまでの期間があっても、使用開始日から計算します。

Q. 耐用年数が過ぎたシャンプー台を処分するときに費用はかかりますか?

A. 処分費用がかかった場合は「雑費」として経費計上できます。また、耐用年数が過ぎた資産でも、まだ使える場合は帳簿上に残すことができます(残存価額1円として管理)。処分する際は、処分日・方法・費用を記録しておきましょう。

Q. 居抜き物件の内装を引き継いだ場合、減価償却はどう扱いますか?

A. 居抜き物件の内装設備を有償で取得した場合は、その取得価額を減価償却します。無償で引き継いだ場合は、取得価額がゼロのため減価償却の対象外です。居抜きで引き継いだ設備に後から工事を加えた場合は、その工事費用が減価償却の対象になります。詳細な処理は税理士に確認することをおすすめします。

Q. 減価償却の計算を自分でするのは難しいですか?

A. 基本的な計算は難しくありませんが、内装工事の耐用年数の判断や、中古資産の耐用年数計算など、判断が必要な場面も多くあります。会計ソフト(freeeや弥生会計など)を使えば、取得価額・耐用年数・取得日を入力するだけで自動計算してくれます。ただし最初の判断(耐用年数の分類)は税理士に確認することで、誤った処理を防ぐことができます。

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