
残業って払わないといけないよね?



労働基準法について詳しく知らないけど、どんな内容になるのかな?
美容室を経営するオーナーの皆さん、日々の業務の中で、従業員の労働条件が法律に適合しているか、しっかり確認できていますか?
美容業界では、長時間労働が普通になりがちですが、もし労働基準法を守らないと、サロン経営に大きなリスクを招く可能性があります。
この記事では、労働基準法の基本や、残業代や最低賃金に関する知識、さらには労働基準法を守らなかったことで起きたトラブル事例を紹介します。



美容室オーナーとして、健全な経営を維持するために、法律を守る重要性を理解しましょう!
監修者


西脇 敬久
あひる社会保険労務士法人 代表社会保険労務士。
美容業界の労務にめっぽう強く、全国に多数の顧問先を抱えている。「美容サロンが申請するべき3つの助成金」を提唱。助成金申請代行においてもトップクラスの実績を誇る。
当社は美容業界に特化した会計労務サービスを提供。数字を活用し、人材流出を防ぎながら、18%の利益率を目指す経営支援を行います。会計業務にとどまらず、経営改善やスタッフ定着率向上のアドバイスを通じて、美容室経営の安定と成長をトータルサポートいたします。
美容室経営をする上で知っておいてほしい労働基準法の規定
労働基準法の規定まとめ!
- 労働時間・・・1日8時間が基準
- 休日・・・毎週少なくとも1日の休みは必須
- 休憩時間の確保・・・8時間を超える場合、1時間の休憩時間を与える
- 残業時間の条件・・・月45時間・年360時間
まず、美容室経営において、労働基準法がどのように影響するのかを理解することが必要です。
労働基準法は、日本で働くすべての人に適用される法律で、働く時間、休み、休憩、最低賃金、残業代などの基本的なルールが定められています。



この法律は、美容師にももちろん適用されます。
それぞれを詳しくみていきましょう!
労働時間|1日8時間、週40時間まで
1日の労働時間は8時間、週の労働時間は40時間までと決められています。
これを超える時間を働かせると、残業代を支払わなければなりません。
美容師は長時間勤務が普通ですが、オーナーとして、従業員の労働時間をしっかり管理し、必要ならば残業代を支払うことが大切です。
休み|毎週最低1日は休みを与えることが義務
また、毎週最低1日は必ず休みを与えることも義務付けられています。
美容師は土日が忙しいことが多いですが、休みを取らせるように計画を立てる必要があります。
休憩時間|6時間を超えると45分、8時間を超えると1時間
1日の労働時間が6時間を超えると45分、8時間を超えると1時間の休憩を取らせることが決められています。
この休憩時間は、仕事から完全に離れてリフレッシュできる時間でなければなりません。
たとえば、カラーの待ち時間に昼食を取ることは休憩時間としてカウントされません。
残業時間の上限
残業時間(時間外労働)に上限があり、月45時間、年間360時間を超えてはいけないとされています。
これを超えて残業をさせるためには、特別な協定が必要ですが、それでも無制限に残業をさせることはできません。
オーナーは、従業員の残業時間を管理し、法定の時間を守ることが求められます。
36協定の締結・届出はしてますか?
36(サブロク)協定とは
労働基準法36条に基づく労使協定。
企業が法定労働時間を超えて労働(残業)を命じる場合に必要となる。
従業員に時間外労働・休日労働をさせる場合は、36協定を結んでおく必要があります。
労働基準監督署への届け出がなく違反した場合は、罰則として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されるおそれがあります。
【厚生労働省の調査結果】美容師の勤務時間・休憩時間・休日日数はどのくらい?
- 平均勤務時間・・・7時間以上8時間以内
- 平均時間を元にすると45分以上
- 平均休日日数・・・5.5日
との結果となっています。
最低賃金の守り方とその重要性
最低賃金も美容室経営でしっかり守るべき法律です。
最低賃金法は、従業員が最低限もらえる賃金を定めた法律で、全員に適用されます。
最低賃金とは?|国が地域ごとに定めた、労働者が最低限もらうべき賃金
最低賃金は、国が地域ごとに定めた、労働者が最低限もらうべき賃金のことです。
オーナーは、従業員にこの最低賃金を下回る給料を支払ってはいけません。



これ以下の時給で美容師を雇用していると、最低賃金法違反になりますので注意してください!
最低賃金を確認する方法
都道府県ごとに設定されており、厚生労働省や各都道府県労働局のウェブサイトで確認できます。
美容室を経営する際は、スタッフの給料が最低賃金を下回らないように、定期的に確認することが大切です。
詳細はこちら
2023年の各都道府県別の最低賃金
都道府県 | 最低賃金(円) |
---|---|
北海道 | 961 |
青森県 | 853 |
岩手県 | 858 |
宮城県 | 938 |
秋田県 | 854 |
山形県 | 861 |
福島県 | 878 |
茨城県 | 960 |
栃木県 | 958 |
群馬県 | 957 |
埼玉県 | 1,072 |
千葉県 | 1,072 |
東京都 | 1,113 |
神奈川県 | 1,112 |
新潟県 | 898 |
富山県 | 908 |
石川県 | 915 |
福井県 | 911 |
山梨県 | 901 |
長野県 | 949 |
岐阜県 | 956 |
静岡県 | 984 |
愛知県 | 1,057 |
三重県 | 955 |
滋賀県 | 964 |
京都府 | 1,015 |
大阪府 | 1,096 |
兵庫県 | 1,000 |
奈良県 | 957 |
和歌山県 | 947 |
鳥取県 | 857 |
島根県 | 857 |
岡山県 | 910 |
広島県 | 987 |
山口県 | 899 |
徳島県 | 882 |
香川県 | 898 |
愛媛県 | 890 |
高知県 | 857 |
福岡県 | 930 |
佐賀県 | 853 |
長崎県 | 853 |
熊本県 | 860 |
大分県 | 858 |
宮崎県 | 853 |
鹿児島県 | 853 |
沖縄県 | 889 |
この表は、2023年10月の最新情報に基づいています。
各都道府県で最低賃金が異なるため、従業員を雇用する際には、地域ごとの最低賃金を必ず確認し、それを下回らないようにしてください。
労働基準法を守らないとどうなるか 実際のトラブル事例
労働基準法を守らないと、どんな問題が起きるのでしょうか?
以下に、美容業界で実際に起きたトラブル事例を紹介します。
事例①|未払い残業代で訴えられる
ある美容室では、長時間の労働が当たり前になっており、従業員は毎日10時間以上働いていましたが、残業代が支払われることはありませんでした。
さらに、オーナーがタイムカードを改ざんし、正確な労働時間が記録されていませんでした。
これに不満を持った従業員が労働基準監督署に相談し、未払い残業代を請求しました。
結果、美容室は未払い分の残業代を支払うよう命じられました。
さらに、タイムカードの不正操作が発覚し、労働基準監督署から厳しい指導を受け、オーナーは罰金を科されました。
このような問題は、美容業界では珍しくなく、労働時間を正しく管理しないと大きなリスクになります。
美容室は営業時間が長いところも多いのと、「営業時間=労働時間」ではないため、残業代の支払いとなった際は勤続年数によっても変わりますが、かなり大きい金額になるケースがあります。



数百万円の支払いになったケースもあるので、注意が必要です。
【従業員向け】未払い残業代の請求方法



もし、未払いの残業代がある場合、どのように請求すればいいのかな?
となった際の請求方法についてまとめてさせていただきます。
詳細はこちら
未払い残業代の請求方法
弁護士に依頼する
弁護士に依頼するのが最も確実で効果的な方法です。
弁護士は、労働審判や訴訟を通じて未払い残業代の回収をサポートしてくれます。
費用はかかりますが、完全成功報酬制の弁護士を選べば、回収された残業代から報酬を支払う形になります。
手間がかからず、回収率も高いのがこの方法の利点です。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署に相談するのも有効な手段です。
労働基準監督署は、労働者の権利を守るための行政機関であり、無料で相談ができます。
未払い残業代に関する調査や指導を行い、サロンに対して是正勧告を出すことも可能です。
ただし、弁護士に依頼する場合に比べて回収できる金額が低くなる可能性があります。
自分で直接請求する
自分で未払い残業代を請求することもできます。
この場合、まずはサロンオーナーに対して「通知書」を送付し、未払い分の支払いを求めます。
これに応じてもらえない場合は、労働審判を申立てるか、最終的には訴訟を起こすことも考えられます。
費用はかかりませんが、手続きには時間と労力が必要です。
また、交渉や裁判の経験がない場合、手続きが複雑になることもあります。
請求の際に必要な書類やデータ
未払い残業代を請求する際には、以下のような証拠を揃えることが重要です。
- タイムカード・・・出勤・退勤の時間が記録されたもの
- 出退勤時刻を記載したメモ・・・個人で管理している勤務記録
- 指名履歴・・・お客様からの指名履歴や予約状況の記録
- 同僚の証言・・・一緒に働いた同僚からの証言
これらの証拠が揃っていることで、未払い残業代を請求する際の有力な資料となります。
事例②|最低賃金違反で罰則を受ける
別の美容室では、若手美容師に歩合制を導入していましたが、売上が少ない月には、実際に支払われる給料が最低賃金を下回ってしまっていました。
この問題が発覚し、従業員が労働基準監督署に訴えたところ、オーナーは過去の未払い分も含めて差額を一括で支払うよう命じられました。
このケースでは、歩合制を導入する際に、最低賃金を下回らないようにする対策が不十分だったことが原因です。
1つの失敗から今まで積み上げてきた信頼関係が崩れることもあります。
人を雇う上で、労働基準法は大切ですので必ず意識してください。
労働基準法を守るためにオーナーができること
- 労働契約の見直し
- 労働時間と休憩時間を正確に管理する
- 賃金を適正に設定する
- 労働基準法の教育を徹底する
- トラブルを未然に防ぐ
これらの事例からもわかるように、労働基準法を守らないと、美容室の経営に深刻な影響が出ることがあります。
では、オーナーとしてどのように労働基準法を守るべきでしょうか?
労働契約の見直し
まず、従業員と結ぶ労働契約を見直しましょう。
契約書には、労働時間や給料、休日、休憩時間などが明確に記載されている必要があります。
特に、歩合制や業務委託契約をする場合は、最低賃金を下回らないようにしっかり計算し、労働条件を守ることが大切です。
また、パートタイムやアルバイトを上手に活用することで、人件費を抑えつつ、スタッフの労働時間を柔軟に管理できるようになります。
労働時間と休憩時間を正確に管理する
従業員の労働時間を正確に管理することは、労働基準法を守る基本です。
タイムカードや勤怠管理システムを導入して、出勤・退勤の時間をしっかり記録しましょう。
また、休憩時間もきちんと取らせ、従業員がリフレッシュできるよう配慮することが大切です。
残業時間が法定の上限を超えないように、シフト制を導入して労働時間を調整することも有効です。
シフト制を活用すれば、スタッフの労働時間を均等に配分でき、無理のない勤務体制を作ることができます。
賃金を適正に設定する
給料は従業員のやる気に直結する重要な要素です。
最低賃金をしっかり守り、適切な給料を設定することが求められます。
歩合制を採用する場合でも、最低賃金を下回らないように計算し、必要ならば基本給やインセンティブを調整しましょう。
また、賃金体系を見直し、昇給やボーナス制度を導入することで、従業員のモチベーションを高めることができます。
特に若手美容師にとって、安定した収入を確保できることは働き続ける理由になります。
労働基準法の教育を徹底する
労働基準法を守るためには、オーナーだけでなく、すべての従業員がその重要性を理解していることが大切です。
定期的に労働基準法に関する勉強会を開き、従業員全体で法令を守る意識を高めましょう。
特に、新しく入社したスタッフには、労働基準法の基本をしっかりと教え、働く環境について理解してもらうことが必要です。
また、オーナーや管理職も、常に法改正や新しい法律に対応できるよう、情報をアップデートしておきましょう。
トラブルを未然に防ぐ
労働基準法違反によるトラブルを避けるためには、リスク管理が重要です。
労働条件や賃金についての不満が出たときには、すぐに対応し、従業員とのコミュニケーションを密にすることが大切です。
問題が大きくなる前に解決できれば、経営にも悪影響を与えません。
また、第三者機関による監査を定期的に受けることで、労働条件が適切かどうかをチェックすることもおすすめです。
これにより、オーナー自身が見落としていた問題点を早めに改善できます。
まとめ
美容室経営において、労働基準法や最低賃金を遵守することは、単なる法律の義務以上に、従業員の満足度やサロンの信頼性に直結する重要な要素です。
労働基準法を守るメリット
- 経営に深刻なトラブル防げる
- 従業員の働きやすい環境を整えることができる
- 長期的見るとサロンの成長と安定した経営につながる



労働基準法を守って長く続く美容室経営を目指してください!