美容室の棚卸のやり方|使いかけの扱い・確定申告の仕訳・棚卸表テンプレートまで解説

「棚卸って、やらないといけないのはわかるけど、具体的にどうすればいいの?」

カラー剤やパーマ液、シャンプー、店販商品。数えるべきものが多い一方で、「使いかけはどうするの?」「確定申告でどう処理するの?」という疑問を持ったまま、なんとなく済ませてしまっているオーナーは少なくありません。

棚卸は、単に在庫を数える作業ではありません。 正しい利益を計算するための作業です。

棚卸の数字がズレれば、利益がズレ、税金がズレます。

つまり、棚卸をサボると「払わなくていい税金を払う」か「払うべき税金を払っていない」か、どちらかの状態になる。どちらにしても損です。

「棚卸し」と聞くと面倒に感じるかもしれませんが、やり方さえわかれば1人美容室でも30分〜1時間で完了します。

この記事では、美容室の棚卸について、数えるもの一覧、使いかけの材料の扱い、棚卸表の作り方、確定申告での仕訳まで解説します。

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目次

美容室の棚卸(棚卸し)とは?なぜ必要なのか

棚卸とは、決算日に残っている在庫の数量と金額を確認する作業です。

個人事業主の場合、基準日は12月31日。この日時点の在庫を数え、金額を算出します。

棚卸(棚卸し)が必要な理由=正しい売上原価を出すため

売上原価とは、その年に実際に使った(または販売した)材料・商品の金額のこと。以下の計算式で求めます。

売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高

たとえば、1月1日時点の在庫が20万円、1年間の仕入れが120万円、12月31日時点の在庫が25万円だった場合。

売上原価は 20万 + 120万 − 25万 = 115万円 です。

つまり、仕入れた金額がそのまま経費になるわけではなく、年末に残っている在庫分は差し引かれるという仕組みです。

棚卸を正しくやらないとどうなるか

本来の期末在庫が25万円なのに、棚卸をせず在庫をゼロとして申告した場合、売上原価が25万円多く計算され、利益が25万円少なくなります。

これは過少申告にあたり、税務調査で指摘されれば追徴課税の対象です。

逆に、在庫を実際より多く計上すると、利益が多く計算されて余計な税金を払うことになります。

どちらにしても損をする。棚卸は正確にやることが何より大切です。

美容室の棚卸で数えるもの一覧

棚卸の対象になるものは、大きく3つのカテゴリに分かれます。

「何を数えればいいのかわからない」という方は、まずここを押さえてください。

カテゴリ①:施術用の材料

お客さまへの施術に使う材料です。具体的には以下のようなものが該当します。

  • カラー剤(1剤・2剤)※番号・色味ごとに数える
  • オキシダント(過酸化水素)※濃度別に数える
  • パーマ液(1液・2液)
  • 縮毛矯正剤
  • ブリーチ剤
  • シャンプー・トリートメント(業務用・大容量のもの)
  • スタイリング剤(施術の仕上げに使うもの)

美容室の棚卸で最もボリュームが大きいのがこのカテゴリです。特にカラー剤は種類が多く、バックヤードの奥に眠っている在庫を数え忘れるケースがよくあります。保管場所を全部回るのがポイントです。

カテゴリ②:店販商品

お客さまに販売する目的で仕入れた商品です。

  • シャンプー・トリートメント(店販用・小容量のもの)
  • スタイリング剤・ヘアオイル
  • 頭皮ケア用品(スカルプシャンプーなど)
  • ヘアアクセサリーなどの雑貨

施術用と同じブランドの商品でも、「業務用(大容量)」と「店販用(小容量)」は別物として管理を分けておくと、棚卸がスムーズになります。

カテゴリ③:貯蔵品

施術にも販売にも直接使わないが、事業に関連する消耗品のストックです。

  • ショップカード・チラシなどの印刷物
  • ギフト用の包装材・紙袋
  • カラー用グローブ(大量にストックしている場合)

貯蔵品は金額が小さいことが多く、少量であれば棚卸に含めなくても問題ないケースがほとんどです。ただし、年末にまとまった量を仕入れた場合は含めておきましょう。

棚卸の対象にならないもの

シャンプー台やセット椅子などの設備・備品は棚卸の対象外です。これらは固定資産として減価償却で処理します。ハサミやコームなどの道具類も、通常は消耗品費として処理するため棚卸には含めません。

棚卸のやり方|4つのステップ

ステップ①:棚卸の日を決める

基準日は12月31日。年末の営業最終日に行うのが一般的です。

ベストは12月31日の営業終了後にそのまま数えること。年明けに数えると、1月の仕入や使用が混ざってしまい、正確な数字が出せなくなります。

ステップ②:在庫を数える

棚卸表を用意して、対象のアイテムの数量を数えます。

ポイントは3つ。

保管場所ごとに数える。 バックヤード、施術スペース、店販棚と順番に回ると漏れが減ります。

「未開封」と「使いかけ」を分けて記録する。 使いかけの扱いは次のセクションで詳しく説明しますが、まずは分けて記録しておくと後で困りません。

2人体制で数える。 1人が数え、もう1人が記入する方法が効率的です。1人美容室なら、スマホで写真を撮りながら数えると記録漏れを防げます。

ステップ③:金額を計算する

棚卸金額 = 数量 × 仕入単価

仕入単価は定価ではなく、ディーラーからの実際の仕入価格を使います。税抜・税込は普段の会計処理に合わせて統一してください。

ステップ④:棚卸表に記録して保管する

数量と金額を棚卸表に記入し、合計金額を算出。この合計が「期末棚卸高」になります。

棚卸表は確定申告の添付書類ではありませんが、税務調査で提示を求められることがあるため、7年間は保管しておきましょう。

使いかけのカラー剤・材料はどう数える?

「使いかけのカラー剤は棚卸しに入れるのか?」

美容室の棚卸で最も多い質問です。

基本の考え方

使いかけでも、まだ使える状態で残っているなら本来は棚卸の対象です。

ただし実務上は、「未開封のもののみカウントし、使いかけは含めない」方法でも、税務上問題になるケースはほとんどありません。

未開封のみカウントでOKなケース

あなたのサロンが以下に当てはまるなら、未開封のみで十分です。

  • 使いかけの金額が全体に対して小さい(在庫20万円に対し、使いかけが1〜2万円程度)
  • カラー剤のチューブの残量を正確に測ることが現実的に難しい
  • 毎年同じ方法で一貫して棚卸を行っている

大切なのは、毎年同じルールで行うこと。ある年は使いかけを含め、別の年は含めない、では利益にブレが出ます。

使いかけもカウントした方がいいケース

スタッフが多く、カラー剤の在庫が常に数十万円分あるサロンや、店販のテスター・サンプルが大量にある場合は、使いかけも概算でカウントした方が正確です。

残量を「0.5本」「0.3本」などの概算で記録し、仕入単価を掛ければOK。厳密に測る必要はなく、合理的な見積もりであれば問題ありません。

美容室の棚卸表の作り方とテンプレート

棚卸表はExcelやスプレッドシートで作成するのが一般的です。

棚卸表に必要な項目

棚卸表に記載すべき項目は以下の7つです。

  • 棚卸日(例:2026年12月31日)
  • カテゴリ(材料 / 店販 / 貯蔵品)
  • 商品名(カラー剤なら番号・色味まで)
  • 数量(未開封○本、使いかけ○本と分けると丁寧)
  • 仕入単価(ディーラーからの仕入価格。定価ではない)
  • 金額(数量 × 仕入単価)
  • 備考(使いかけの場合は残量の目安、廃棄予定の有無など)

「商品名」と「仕入単価」は事前にテンプレートに入力しておくと、棚卸当日は数量を書き込むだけで済みます。ここが時短のカギです。

棚卸表の記載例

カテゴリ商品名数量単価金額備考
材料カラー剤 ○○ 6/N5本600円3,000円未開封
材料カラー剤 ○○ 8/A3本600円1,800円未開封
材料オキシ 6% 1000ml2本1,200円2,400円未開封
材料パーマ液 1液1本2,500円2,500円未開封
材料シャンプー(業務用)1本2,000円2,000円未開封
材料トリートメント(業務用)2本2,500円5,000円未開封
店販シャンプー ○○ 300ml4本1,500円6,000円
店販トリートメント ○○ 300ml3本1,800円5,400円
店販ヘアオイル ○○ 100ml2本1,200円2,400円
貯蔵品ショップカード500枚5円2,500円
合計33,000円

この合計金額が、確定申告で使う期末棚卸高です。

テンプレートを作る際の3つのポイント

①カテゴリ別に並べる。 「材料」「店販」「貯蔵品」でセクションを分けると、数え忘れを防げます。

②前回のデータを残しておく。 前年の棚卸表をコピーして使えば、商品名や単価の入力を省略できます。

③仕入単価をあらかじめ入力しておく。 棚卸当日は「数を数えるだけ」で済むようにしておくと、作業時間を大幅に短縮できます。

棚卸しの結果を確定申告でどう処理するか

青色申告決算書への記入

個人事業主の確定申告では、青色申告決算書(または収支内訳書)に以下の3つを記入します。

  • 期首商品(製品)棚卸高: 1月1日時点の在庫金額(=前年の期末棚卸高と同じ)
  • 仕入金額: 1年間に仕入れた材料・商品の合計
  • 期末商品(製品)棚卸高: 12月31日時点の在庫金額(=棚卸表の合計)

この3つから売上原価が自動計算されます。

仕訳の具体例

期首の仕訳(1月1日): 前年の期末在庫を売上原価に振り替える

(借方)期首商品棚卸高 200,000円 / (貸方)商品 200,000円

期末の仕訳(12月31日): 棚卸で確認した在庫を資産として計上

(借方)商品 250,000円 / (貸方)期末商品棚卸高 250,000円

freee、マネーフォワード、弥生などの会計ソフトを使っている場合は、決算整理仕訳として期首・期末の棚卸高を入力すれば自動で売上原価が計算されます。

なお、開業初年度は期首棚卸高がゼロです。仕入金額と期末棚卸高だけ記入すればOKです。

棚卸が利益に与える影響|数字で見る

「たかが在庫の数え間違いで、そんなに影響ある?」

あります。

期末在庫が5万円ズレた場合

年間売上1,000万円、仕入高100万円の美容室で試算します。

項目正しい場合在庫を5万円多く在庫を5万円少なく
期末棚卸高25万円30万円20万円
売上原価95万円90万円100万円
利益への影響基準+5万円−5万円
税金への影響基準+約1.5万円−約1.5万円(過少申告)

在庫5万円のズレで、税金に約1.5万円の差。 これが毎年積み重なると、無視できない金額になります。

材料費率の目安と棚卸の関係

美容室の材料費率は、売上の7〜12%程度が一般的な水準です。

4大コスト(人件費・家賃光熱費・材料費・広告費)の合計を売上の80%以内に収めるのが健全な経営の目安ですが、材料費は比較的コントロールしやすいコストです。

棚卸を毎月行っていれば、「今月は材料を使いすぎた」「在庫が積み上がっている」という変化に気づけます。年末だけの棚卸では、こうした気づきは得られません。

1人美容室なら、月末に5〜10分で在庫をざっと確認するだけで十分。スタッフがいるサロンなら、在庫管理の担当者を決めて月末に棚卸を行う体制を整えておくと、年末の作業が楽になります。

在庫は「寝かせたお金」

在庫はお金が「物」に変わった状態です。

使わない在庫を抱えているなら、そのお金は借入返済にも投資にも回せないまま眠っていることになります。在庫金額が月間仕入の2〜3カ月分を超えていたら、持ちすぎのサインです。

「欠品が怖いから多めに発注する」気持ちはわかります。でも、それが積み重なると、バックヤードに10万〜20万円分の在庫が静かに眠っている状態になる。そのお金が動いていれば、広告を打つことも、借入を早く返すこともできたかもしれません。

棚卸は「在庫を数える作業」であると同時に、お金の使い方を見直す機会でもあります。

よくある棚卸の失敗パターン

実務でよくある失敗を3つ挙げておきます。

①年末に棚卸を忘れる。 1月になってから気づいても、12月31日時点の在庫を正確に再現するのは困難です。年末最終営業日のToDoに入れておきましょう。

②仕入単価を「定価」で計算してしまう。 ディーラーからの仕入価格と定価は違います。仕入価格がわからない場合は、納品書や請求書を確認してください。

③店販商品の在庫を数え忘れる。 施術用の材料は数えたけど、店販棚の商品を忘れる。店販商品も仕入れている以上、棚卸の対象です。

まとめ

テーマポイント
棚卸とは期末時点の在庫を数え、金額を確認する作業。正しい売上原価の計算に不可欠
数えるもの施術用材料・店販商品・貯蔵品の3カテゴリ。設備・備品は対象外
やり方①日を決める→②数える→③金額計算→④記録。12月31日の営業後がベスト
使いかけ未開封のみカウントでもOK。毎年同じルールで一貫させることが大切
棚卸表7項目を記載。単価を事前入力しておくと当日は数を数えるだけ
確定申告「期首棚卸高」「仕入金額」「期末棚卸高」を記入。仕訳は期首・期末の2回
利益への影響在庫5万円のズレ → 税金約1.5万円の差
よくある失敗年末に忘れる / 仕入単価を定価で計算 / 店販在庫を数え忘れる

棚卸を含め、美容室の数字を整理するのは面倒に見える作業です。

でも、面倒なのは「やり方がわからないから」であって、仕組みさえつくれば難しくありません。棚卸表のテンプレートを用意し、月末の在庫確認を習慣にする。それだけで年末の作業は30分で終わるようになります。

数字を正確に把握することは、経営判断の精度を上げる第一歩です。棚卸も、売上原価も、材料費率も、知っていれば整えられる。知らないまま放置するから、利益がどこかに消えていく。

でも逆に言えば、ここを整えれば利益は残る。

よくある質問

Q. 棚卸をしないまま確定申告をするとどうなりますか?

期末棚卸高を「0円」として申告すると、在庫分だけ売上原価が多くなり、利益が過少に計算されます。税務署は、仕入れがあるのに期末在庫がゼロという申告に対して確認を行うことがあり、税務調査で指摘されやすいポイントです。棚卸を忘れた場合でも、年末に近い時期の在庫状況から合理的に推計して計上する方が安全です。

Q. カラー剤の番号ごとに1本ずつ数えないといけませんか?

同じ単価のカラー剤であれば、「カラー剤○○シリーズ ○本」とまとめてカウントしても問題ありません。ただし、通常のカラー剤と高価格帯のカラー剤など、単価が異なる商品は分けて記録してください。

Q. 店販商品は仕入れた時に経費にしていますが、棚卸も必要ですか?

仕入れた時に全額を仕入高として計上していても、年末に売れ残っている分は棚卸で在庫として計上する必要があります。これにより、実際に販売した分だけが売上原価として経費になる仕組みです。店販商品を仕入れているのに期末在庫がゼロというのは不自然なので、きちんと数えておきましょう。

Q. 1人美容室でも毎月棚卸した方がいいですか?

毎月の棚卸は義務ではありませんが、月末に5〜10分で在庫をざっと確認するだけでも、材料費率の管理がしやすくなります。毎月の習慣にしておけば、12月末の棚卸は「いつもの作業+少し丁寧にやる」だけで済むため、年末の負担が大幅に減ります。

Q. 棚卸の評価方法はどれを選べばいいですか?

届出をしない場合は「最終仕入原価法」が自動適用されます。年末に最も近い時期の仕入単価で在庫金額を計算する方法です。美容室の材料は価格変動が小さいため、この方法で十分対応できます。特別な届出は不要なので、そのまま使えばOKです。

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